【FPの手引き】 教育資金繰りに関わる制度 ~こども保険・学資保険・教育ローン・奨学金制度の解説~

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

家庭を築いて子供が何人欲しいだとか、とにかくお金を稼ぎたいだとか、誰しも将来を夢見ることはあると思います。
ただ、どんな願いがあるにしろ、この世の中では“お金”が大切になります。
そのために、貯金をしたり、保険に入ったり、投資をしてみたり、色々とやり繰りしなければならないことがあるんですよね。
そんな人生設計の知識が関係するファイナンシャルプランナー(FP)について紹介していきます。

今回は「教育資金繰りに関わる制度(こども保険・学資保険・教育ローン・奨学金制度)」についてです。

1.初めに

ライフイベントの中でも教育資金・住宅取得資金・老後資金は多くの資金が必要となり、これらの資金は3大必要資金と呼ばれています。
この3大必要資金を主軸として他のライフイベントも意識して資金計画を練ってライフイベント表・キャッシュフロー表などを作成することで、将来的な資金計画を客観視することができます。

ここまでは過去の記事で解説してきた内容です。

ただ、3大必要資金は数百万~数千万と非常に高額な為、現金で用意することはできないということがよくあります。
というか、数千万をポンと出せる人の方が少ないです。

ではどうするのかと言うと、保険やローンといった制度を利用することになります

ということで、今回は教育資金繰りに関わる制度であるこども保険・学資保険・教育ローン・奨学金制度の解説をしていきます。
将来的に家庭を築いて子供を育てたいという方は、よく理解しておきましょう。

2.こども保険とは?

こども保険とは、子供のための教育資金を計画的に貯めることを目的とした貯蓄型の生命保険のことです。

こども保険に加入すると、定額の積み立て金を支払うことで、子供の進学時期に合わせて満期保険料や祝金を受け取ることが可能です
決められた保険料を支払っていれば、必要な時期に教育資金を受け取れる制度というわけです。

たまに必要なタイミングで“必要な教育資金を受け取れる”制度という説明を見かけるのですが、支払金額と契約した保険商品の内容によって受け取れる金額も当然変わってきますので、“必要な教育資金を受け取れる”という記述は誇張です。
100万円しか支払っていないのに500万円も貰えるわけないでしょう?
そんな錬金術があるなら誰でも加入しています。

これまでの説明だと貯金とやっていることはほとんど変わりないと思うかもしれませんが、こども保険は生命保険だという大きな違いがあります。

生命保険なので、こども保険料の支払い中に契約者が死亡した場合の保証機能がいくつか用意されています。
契約内容によって異なりますが、メジャーどころでは以下のような保証が存在します。

  • 契約者が死亡した場合、以後の保険料の支払いが免除される。
    また、支払額に関わらず満期保険料や祝金を受け取ることが可能。
  • 契約者が死亡した場合、保険期間満了時まで育英資金が支払われる。

万が一自分(契約者)の身に何かあった時のために、子供の教育資金を残しておこうというわけです。

他にも、子供の医療保険特約・傷害特約・災害特約などのオプションもセットになっている保険商品があったりしますので、必要だと思う特約は付けておくと将来子供に起こり得るリスクを軽減することができます。
ただ、オプションを付ければ付けるほど当然ながら保険料も上がるので、本当に何が必要なのかは契約時によく考えるようにしましょう。

ちなみに、個人的にはこども保険はそこまでおすすめできません。
こういった保険って基本的に返戻率はちょっと低めなので、『普通に投資しつつ、必要に応じて生命保険に加入しておけば良いのでは?』となるんですよね。
仮に300万円あれば足りると思ってたとしても、インフレで350万円必要になったるする可能性もありますし。
なので、「お金があるとつい散財しちゃう人や投資に興味が無い人が加入する分には良い制度」というのが私の意見です。

3.学資保険とこども保険の違い

学資保険とは、ほぼこども保険のことを指しています。

厳密にはこども保険の一部が学資保険なのですが、近年では学資保険にも様々な特約をセットにすることがある為、学資保険とこども保険の境界が曖昧になっています。
普通にこども保険(学資保険)という形で保険の紹介をしている保険会社もありますからね。
ほけんの窓口とか。

一応何が違うのかを説明しておくと、学資保険は教育資金の積み立てに特化した保険のことを指しています
子供の医療保険特約・傷害特約・災害特約などのオプションは本来付けないものなのですよ。
オプション付いたらこども保険ですからね。

なので、学資保険=こども保険だと思っておいて問題は無いです。
契約時に何が必要なのかだけ意識しておけば、名称が学資保険だろうがこども保険だろうが関係無いですからね。

4.教育ローンとは?

教育ローンとは、子供のための学費や在学費用などに使用する目的で金融機関から借り入れる資金のことです。

教育ローンには公的ローン民間ローンの2種類があります。

公的ローンとは?教育一般貸付とは?

公的ローンは国営の教育ローンを指していて、主だったものとして教育一般貸付というものがあります
公的ローンと言ったら、ほぼほぼ教育一般貸付のことを指しています。

教育一般貸付は、政策金融機関(民間金融機関の補完を目的に運営される国の金融機関)である日本政策金融公庫が取り扱う教育ローンです。
教育一般貸付の契約時には審査があり、子供の数に対する保護者の世帯年収の上限が定められているので、一定金額以上の世帯年収があると審査は通りません
暗に、『それだけ年収があるなら、融資しなくてもやっていけるでしょう?』と言っているわけです。
本当に生活が困窮していて教育資金が足りない人向けの教育ローンということがヒシヒシと伝わりますね。
片親や年収が少ない家庭の場合は、優遇措置があったりもしますしね。

そういった背景があるので、金利は比較的低めの固定金利(契約時の金利から返済まで金利が変わることは無い)になっています。
とは言え、2025年9月時点で年利3.15%あります。
2023年6月時点で年利1.95%だったので、今後も上がる可能性はあります。

まあ、固定金利ではあるので、返済額が一定で想定から外れることはないので、計画的に契約していれば困ることはないはずです。

融資限度額は学生1人につき原則最高350万円ですが、一定の要件を満たす場合は450万円まで借り入れ可能になっています。
この融資金は入学金や授業料だけでなく、受験費用・定期券購入費用・賃貸契約費用・パソコン購入費用など幅広く利用できます。
また、後述の奨学金との併用も可能です。

なので、学費は少額品で賄い、その他通学用の生活費用に教育一般貸付金を当てるといった使い方もできます。

民間ローンとは?

民間ローンは、公的ローンと違って国営ではなく民間金融機関である銀行や信用金庫などが取り扱っているローンのことです

こちらも審査がありますが、民間金融機関ごとに審査基準は異なりますし、公的ローンよりも審査はスピーディー且つ緩くなっています。
教育一般貸付は本当に困窮した人のための救済措置だったのに対して、民間ローンは民間金融機関が利益を得る目的もあるローンですからね。
返済能力さえありそうなら、普通に貸し付けてきます。

なので、世帯年収上限は基本的に無く、ある程度高収入だったとしても融資してくれます

そんな背景があるので、金利は公的ローンより高く、年利5%程度に設定されていることもあり、変動金利(契約時の金利から市場の金利に応じて金利が変化する)になっていることが一般的です
また、融資限度額も公的ローンより高額に設定されていることが多いですし、返済期間も契約によってまちまちで最長20年のケースもあります。
要するに、教育資金はあるけど、そこにお金をかけると生活資金が削れてこれまで通りの生活の維持が難しい人なんかが受ける教育ローンということです

その為、全体的に公的ローンよりも融通が利く代わりに金利が高いのです。

公的ローンと民間ローンの比較

公的ローンと民間ローンの違いについて解説したので、ここで一旦違いをまとめておきます。

大まかには、以下のような違いになっています。

図1

公的ローン(教育一般貸付)は審査が厳しい代わりに金利が低め、民間ローンは審査が緩い代わりに金利が高めとイメージしておけばOKです。

5.奨学金制度とは?

奨学金制度とは、経済的な理由で進学が難しい人のために学費や生活資金を支援する制度のことです。
学費の給付・貸与や入学金の減額・免除を受けられる制度です。

支援対象は高校生・大学生・専門学校生・大学院生・海外留学生など幅広いです。

実施団体は主に文部科学省が所管する独立行政法人である日本学生支援機構(JASSO)ですが、大学独自の制度があったり、地方自治体が提供していることもあります。
基本は日本学生支援機構の国営だと思っておきましょう。

奨学金制度には貸与型給付型の2種類があります。

貸与型の奨学金制度

卒業後に返済義務があるタイプの奨学金です

貸与型の奨学金制度には、無利子の第一種奨学金有利子の第二種奨学金があります。

第一種奨学金を受け取るには、世帯年収の上限基準を満たしつつ、奨学金を受け取る学生の学力が求められます。
それに対して第二種奨学金は、上限3%程度の低利子にはなりますが、その代わりに審査は緩く設定されています。
より上位の奨学金制度を受けたいなら、本当に家が困窮している且つ学生の学びたいという意欲の証明が必要だというわけです

融資限度額は日本学生支援機構においては規定されていて、第一種奨学金と第二種奨学金で上限が異なります。

第一種奨学金の場合、自宅通学なら月額20,000円~54,000円、自宅外通学なら月額20,000円~64,000円が融資限度額になります。
自宅外の方がお金がかかるので、上限が少し広がっているんですね。

第二種奨学金の場合は自宅通学か自宅外通学かは関係無く、月額20,000円〜120,000円が融資限度額となります。
範囲が広いですが、10,000円単位で融資額を選択可能です。

給付型の奨学金制度

卒業後に返済義務が無いタイプの奨学金です。

破格の条件になるので、貸与型の第一種奨学金よりも厳しい審査を通過する必要があります
学校側がお金を出してでも来て欲しい人材である必要があると思っておきましょう。

日本学生支援機構の奨学金についての補足説明

奨学金制度の主要団体である日本学生支援機構ですが、昔は貸与型の奨学金しかありませんでした
ですが、2017年頃から給付型の導入が始まり、2020年4月より実施されるようになった「高等教育の就学支援新制度」を機に大規模に拡充されるといった背景があります。

その為、日本学生支援機構の奨学金制度は貸与型しか存在しないという解説をされている資料があった場合、それは情報が更新されていないだけです
割と見受けられるので注意しましょう。

6.教育ローンと奨学金の違い

最後に、教育ローンと奨学金の違いについて説明していきます。
ここまでの説明では、その制度の実施元が異なるだけで、やっていることは教育資金の貸与・給付という点で共通していましたからね。

先にどんな違いがあるのかを表示しますね。

図2

大体こんな感じです。

まず、受取人についてですが、教育ローンの場合は原則保護者になります
基本的に学生が借りることはできません。
限度額350万円を学生の身で渡されても良い方向に転がることはないでしょうからね。
ただし、社会人学生や親から独立して生計を立てている場合など、例外的に本人が借入人になれるケースもあります

奨学金制度の場合は、学校で学ぶ学生自身が受取人になります

受取人が違うから何なのかと思うかもしれませんが、受取人には返済義務が付き纏います。
要するに、教育ローンは保護者が受け取って返済するのですが、奨学金は学生が受け取って学生が返済する必要があります。

だから、社会に出てからSNSで『奨学金が全然払い終えない…』とか呟いている人がいるんですよ。
こういった人達の大半は学習意欲がそこまで無いのに奨学金を借りたパターンなので、有利子の第二種奨学金を借りていることが多いのですが、教育ローンと違って学生自身が受け取ってしまうためか奨学金をお小遣いだと勘違いしている人が一定数いるんですよね。
実際、奨学金でギャンブルするアホを過去に何人も見たことがあります。
ギャンブルで負けすぎて食費が足りないらしいですよ。
借金なので自己責任で勝手にしろとは思うのですが、それならSNSとか人に愚痴るなと私は言いたいです。

次に受取方法についてですが、教育ローンは一括支給奨学金は毎月定額支給という差があります。
教育ローンの場合は保護者が受け取って管理するので一括支給ですが、学生が受け取る奨学金は毎月支給とすることで学業に関係無いことへ無駄遣いしないようにしているんじゃないですかね?
ただでさえギャンブルに使うアホもいるのに、1年分まとめて支給したら早々に使い切る未来が見えますからね。

金利に関しては、教育ローンの方が高めです
教育ローンは保護者が返済しますからね。
学生が返済人になる奨学金より金利が高いのは当然でしょう。

次に、子供の学力についてです。

教育ローンは、保護者が教育資金が足りなくなるかもしれないからと融資を受ける仕組みのことなので、そこに教育対象である子供の学力は関わってきません
ですが、奨学金制度は経済的な理由で進学が難しい子供に大して『そんなに勉強したいなら良い条件で融資してあげるよ』と手を差し伸べる制度なので、勉強したいという意思表明のために子供の学力が必須になってきます
ここも大きな違いですね。
まあ、第二種奨学金に関しては本当に最低限の学力があれば受け取れることは多いですが…。

最後に申込時期の違いについてです。

教育ローンは、1年を通していつでも申し込みが可能になっています
審査結果の通知に10日前後かかる点と、融資金の受け取りまでに10日前後かかるという点には注意が必要ですけどね。
それに対して奨学金制度は、申込時期・申込期限が決まっているので、いつでも好きなタイミングで申し込めるわけではありません。

以上が教育ローンと奨学金制度の主な違いです。
知識としては、図2の表を覚えておけば大体OKです。

以上、「教育資金繰りに関わる制度(こども保険・学資保険・教育ローン・奨学金制度)」についてでした。