今回は、「シールドケーブルの接地の仕方」についての説明です。
1.シールドケーブルとは?
シールドケーブルとは、その名の通りシールド処理を施したケーブルのことです。
シールド処理とは、ノイズを遮断するための処理のことです。
要は、ノイズの影響を抑えるための処置を施したケーブルがシールドケーブルに当たります。
シールド処理を行っているケーブルは、内部電線とシース(外部被膜)の間に何かしらの導体が配置されるようになります。
内部電線を導体で覆うのです。
そうすることで、導体が外来ノイズを吸収し、内部電線がノイズから守られるのです。
ここで使用する導体は、編組線や薄い金属膜が一般的です。
導体がノイズを吸収するのは良いのですが、そのままだと吸収したノイズが留まってしまい、導体自体がノイズの発生源になってしまいます。
暑いから氷枕を使っていたけど、熱を吸収し過ぎて逆に暑く感じるようなイメージです。
その為、どこかにノイズを逃がしてあげる必要があります。
そこで、導体をGNDに落とします。
こうすることで、導体を伝ってより電気の流れやすいGNDへノイズが逃げていくのです。
ちなみに、ツイストペアケーブルの内、編組線でシールド処理をしたものをSTPケーブル、薄い金属膜でシールド処理したものをFTPケーブルと呼びます。
2.シールドの接地方法の違い
ノイズを逃がすためにGNDに接地する必要があるわけですが、実は接地方法によって抑制できるノイズの種類が異なります。
設置方法は2パターン存在し、「ケーブルの片側のみ接地する」か「ケーブルの両側を接地する」のどちらかになります。
どちらも接地しないと、先程述べたようにノイズの逃げ道が無くなって、シールド処理をしている意味が無くなりますからね。
必然的にこの2パターンしか存在しないのです。
ただ、何故片側接地と両側接地の違いがあるのでしょうか?
ここからは、その理由について説明していきます。
ちなみに、シールドと繋いだ配線のことはドレーン線やドレイン線と呼びます。
内部電線を覆っているシールド用途の導体にはんだ付けなどでドレーン線を接続し、そのドレーン線をコネクタまで引っ張っていきます。
こうすれば、コネクタ経由で接地してあげることができます。
車載用ケーブルなんかにはよくドレーン線が使われていて、線色は茶色になっていることが多いです。
記号がDRNとかになっていたらドレーン線である可能性が高いです。
3.片側接地は外来ノイズを抑制する/静電シールドケーブル
片側接地の場合、静電誘導や不要輻射などの外からのノイズの影響を抑えることができます。
このタイプのシールドケーブルは、静電シールドケーブルと呼びます。
STPケーブルとFTPケーブルは静電シールドケーブルに該当します。
電流には、発生源に戻ってくる性質があります。
電源と抵抗を繋いだ単純な回路を描くと、電流は抵抗に流れた後に電源に戻ってくるでしょう?
それと同じです。
その為、外来ノイズがかかることによって電線に電流が発生すると、電線を始点として電流が流れることになります。
つまり、両側接地にすると発生源である電線まで電流が一周して戻ってきてしまうのです。
電流が流れると、電磁誘導により磁束(磁界)が発生します。
この磁束がノイズになるので、シールドの導体には電流は極力流れていて欲しくありません。
だから片方だけ接地して、GNDに電流が流れたきり帰ってこれないようにしているのです。
4.両側接地は内部電線が発するノイズを抑制する/電磁シールドケーブル
両側接地の場合、導体で覆っている内部電線自体の発するノイズの影響を抑えることができます。
このタイプのシールドケーブルは、電磁シールドケーブルと呼びます。
電線に流れる電流から電磁誘導が発生し、その磁束(磁界)の影響が外に出ないように閉じ込める場合は両側接地にするのです。
普通の信号線なら、両側接地にすることはありません。
信号線から出るノイズはたかが知れているからです。
なので、大電流が流れる線の時に両側接地にすることがあります。
電磁シールドケーブルのシールドは、鉄・銅・アルミなどのテープをグルグルと巻き付けて処理を行います。
その為、ケーブルを頻繁に屈曲させる箇所には使用できません。
せっかくのシールドが割れてしまいますからね。
内部電線に流れる電流を基に磁束が発生し、近辺のシールドの表面にはその磁束を打ち消す向きに電流が流れます。
そうして部分部分で磁束を打ち消し合うようになるので、内部電線のノイズを抑えることができます。
静電シールドケーブルと違ってシールドに流れる電流を利用するので、こちらは両側を接地するのです。
以上、「シールドケーブルの接地の仕方」についての説明でした。