【基礎から学ぶ規格と法律】 下請法とは? ~下請業者を代金の支払い遅延や減額などの不当な扱いから守る法律~

ルール
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世の中には様々なルールがあります。
規則・規定・規格・法律…呼び方は多々ありますね。
そんなルールの中には聞いたことはあるけど内容まではちゃんと理解していないものがあるのではないでしょうか?
ただ、そこで調べてみたとしても、規格や法律の原文やその引用ばかりが出てきて、言い回しが難しくてイマイチわからないことが多いです。
本記事ではそんなモヤモヤを解決できるよう、噛み砕いてわかりやすく記述していけたらと思います。

今回は、下請法について記述していきます。

1.規格と法律の違い

本題に入る前に規格と法律について補足説明します。

まずは規格からです。

単純に“規格”と検索すると、“製品・製品寸法・材料・工程などに対して定義した基準”というニュアンスの説明が出てきます。
イマイチわかりづらい説明ですよね。
なので、何かを作る際のベースとなるものを規格と捉えてください

例えば、ある会社がお饅頭を作って売ろうとしているとします。
その際、量産をするためにA工場とB工場で製作をすることにしました。
売ろうとしているお饅頭には当然種類がありますので、その種類ごとに同じ原材料・サイズ・量でないといけません。
大きさや形がバラバラだと生産コストと売値のバランスが崩れてしまいますからね。
なので、『この材料を使って、この金型で、この分量で、このような工程で製作してください』という指示が必要です
この指示が規格というイメージです
こうして規格を定めておけば、A工場とB工場のように製作場所が変わったとしても出来上がる製品は全く同じものになります。

ちなみに、長さを表すための「m:メートル」という単位や重さを表すための「kg:キログラム」という単位なんかも規格です。
ああして基準を定めているから”大体これぐらい”という想像を私達はできるのです。

次は法律についてです。

規格の説明をしたので何となく規格と法律では何が違うのか想像ができるのではないでしょうか?
規格は標準・基準を表すものでした
規格は遵守した方が何かと良いですが、必ずしも規格に則る必要はありません。
あくまで任意です。

その点、法律は守らないと罰則があります。
ここが大きな違いです。

そんな規格と法律…つまり決まり事について調べてまとめたのが本記事となります。
内容はそこそこ知れる程度のレベルに抑えています。
専門的過ぎると情報過多で意味わからなくなるので。

2.下請法とは?

下請法とは、下請代金支払遅延等防止法の略称です。

そもそも下請けとは、請負人が自ら引き受けた仕事を更に第三者に請け負わせることです。
要は、直接お客様と交渉して取ってきた仕事を自社内で完結させるのではなく、他社にも手伝ってもらうわけです。
ここで言う仕事を取ってきた企業を元請業者、元請業者から仕事を依頼された他社のことを下請業者と呼びます。

お客様と仕事を依頼される会社の関係は、どちらの方が優位に立つでしょうか?
基本的にはお客様ですよね?
お客様側はどの会社に仕事を依頼するのか選べる立場なので、別に他の会社に依頼しても良いんですから。
会社側としても仕事が有り余ってでもいない限り、断る理由は特に無いのです。
同業他社に仕事を取られるだけですからね。

その考えと同じで、元請業者は仕事を発注する立場にあるため、下請業者よりも優越的地位にあると言えます。
なので、仮に下請業者が不利な条件だったとしても、大きな声を上げられないんです。
口答えしたら仕事が無くなるかもしれませんからね。

そこで、下請業者を代金の支払い遅延や減額などの不当な扱いから守り、取引を適正化するような法律が必要になります。
それが下請法です

下請法の内容については、元請業者の義務や禁止事項、違反したときの勧告や罰金措置なんかが定められています。
まあ、下請代金支払遅延等防止法という正式名称を知っていればある程度の想像は付きますけどね。

3.下請法ではどのようなことから守られるのか?

下請法ではどのようなことから守られるのかというイメージをいくつか記述しておきます。
例があると無いのでは理解度に大きな差がでますからね。
ちなみに、実例も混ざっています。

・不当に低い価格を要求され、買いたたかれる。

・元請業者の自社ルールによる都合により代金の支払いが遅れることを一方的に告げられる。
※下請法では、納品後60日以内の支払い義務があると定められています。

・初期に契約した内容より報酬を減額される。
※下請法では、仮に同意があっても減額は禁止されている。

・既に商品を作り始めているのに途中で仕様の変更を告げられ、そこまでの製作費用を支払わない。

・既に商品を作り始めているのに、誤発注だったという理由から途中で一方的にキャンセル/返品される。

・物価上昇により値上げが必要になり商品単価の見直しを要求したが、単価を据え置きにされる。

上記のような『そりゃあ許される行動ではないよね』と感じるようなことが、下請法が無かったら起こり得るということです。
これが社会です。

下請けと聞くとなんかブラックなイメージがあるのは、実際に違反して報道されている元請業者があるからです。
ブラックなイメージというか実際にブラックになっていることがあるのです。
特に、下請業者が更に下請業者に依頼して多重化していると、下の請負業者になるほど低利益・短納期の業務を押し付けられることになるので、昭和な環境が構築されるんです。
そうならないように下請法があるのです。

4.下請けが成り立つメリット

下請けという業務形態はブラックなイメージが一般的に強く、デメリットばかりあるように感じるかもしれませんが、その業務形態が成り立っているからにはしっかりとメリットもあります
なので、どんなメリットがあるのか考えてみましょう。

まずは元請業者のメリットについてです。
こちらは想像しやすいですね。
単純に効率が良いんです。

誰しも得意分野と不得意分野が存在します。それは会社にも言えることです。
できるなら得意分野の業務に取り組みたいものですが、仕事はそう簡単に選り好みできるものではありません。
そこで、苦手分野は下請けに任せるのです
そうすれば得意分野に注力できるでしょう?

それに対して、下請業者は営業をしなくて済むというメリットがあります。

仕事は勝手に舞い込んでくるわけではありません。
広告で宣伝したり、営業が外回りをして案件を取ってくる必要があります。

しかし、下請業者なら元請業者から仕事を振られるだけなので、広告宣伝費も営業の人件費も不要になります。
下請業者は比較的規模の小さな会社が多いので、仕事を得るためのコストを削減できるというのは大きいんですね。

上記のようなメリットもあるので、下請けという業務形態は成り立っているのです。
まあ、デメリットもたくさんあるわけですけど。

5.下請法の適用範囲

下請法の適用対象になるかどうかという判断は、取引の内容と各事業者の資本金によって決まります。
どちらか片方でも満たさないと下請けの取引は成り立ちません。

下請法が適用される取引の内容は、以下の4つの取引が該当します。

①製造委託

物品の製造や加工における規格やデザインなどを指定した上で、他の事業者に委託する取引。
ただし、家屋などの建築物は対象外になる。自動車メーカが自動車部品の一部を部品メーカに製造委託する場合などが該当する。

②修理委託

物品の修理を事業者に委託する取引。
委託する修理業務が一部であっても対象になる。お客様から請け負った業務を再委託する場合も対象となる。
自社で使用している工作機械が故障した際の修理を他社に委託する場合や、お客様から請け負った修理依頼を他社に再委託する場合などが該当する。

③情報成果物作成委託

情報成果物(プログラム・映像コンテンツ・デザインなど)を事業者に委託する取引。
委託する業務が一部であっても対象になる。
お客様から請け負った業務を再委託する場合も対象となる。
会社専用の勤怠管理システムの開発を委託する場合などが該当する。

④役務提供委託

役務提供業務(運送・メンテナンス・情報処理・コールセンターなどの顧客向けサービス)を事業者に委託する取引。
委託する業務が一部であっても対象になる。
また、建設工事は対象外になる。お客様から請け負ったメンテナンス依頼を他社に再委託する場合などが該当する。

取引内容については上記の通りです。
この条件に、当て嵌まらなければそもそも下請法の対象外となります。

次に、資本金の条件です。

大雑把には、資本金が大きい事業者から資本金が小さい事業者に向けた委託である必要があると言えます。
ただ、取引内容によって資本金が○○円以上/以下という条件があります。

取引内容によって資本金の条件は以下のように変わります。

パターン①

◎取引内容
製造委託、修理委託、情報成果物作成委託(プログラムの作成の場合)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理の場合)

◎資本金
【条件1】元請事業者の資本金が3億円を超え、且つ下請事業者(個人事業主を含む)の資本金が3億円以下の場合
【条件2】元請事業者の資本金が1千万円を超え(3億円以下)、且つ下請事業者(個人事業主を含む)の資本金が1千万円以下の場合

パターン②

◎取引内容
情報成果物作成委託(プログラムの作成以外の場合)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理以外の場合)

◎資本金
【条件1】元請事業者の資本金が5千万円を超え、且つ下請事業者(個人事業主を含む)の資本金が5千万円以下の場合
【条件2】元請事業者の資本金が1千万円を超え(5千万円以下)、且つ下請事業者(個人事業主を含む)の資本金が1千万円以下の場合

これが下請法が適用される範囲です。
条件1の境目が取引内容によって大きく異なる点には注意が必要ですね。

6.下請法における書面への記載事項

下請法では下請業者を代金の支払い遅延や減額などの不当な扱いから守ると述べましたが、実際にどうやって守っているのでしょうか?
答えは、書面への記載です。

元請業者は、下請法で定められた12項目を契約書類に記述し、その書面を交付することを義務付けられています。
その12項目は以下のようになっています。

1.元請事業者(発注者)及び下請事業者の名称
2.委託日(発注日)
3.下請事業者の給付内容
4.納期(下請事業者の給付受領期日)
5.納品場所(下請事業者の給付受領場所)
6.検査完了期日(発注者が検査する場合に限る)
7.下請代金額またはその算定方法
8.下請代金の支払期日
9.手形金額及び手形の満期(手形を交付する場合に限る)
10.金融機関名及び支払期日(一括決済方式で支払いを行う場合に限る)
11.電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日(電子記録債権で支払う場合に限る)
12.品名・数量・対価・引き渡し期日・決済期日・決済方法(発注者が受注者に原材料などを有償支給する場合に限る)

ちなみに、この内容は下請法第3条に定められているので、3条書面と呼ばれていることがあります。

7.下請法を違反するとどうなるのか?

最後に、下請法を違反するのどうなるのかをいくつか記述しておきます。
下請法に限らず法律違反はペナルティが大きいので、元請事業者は注意が必要です。
知らないうちに違反しているかもしれませんからね。

  • 公正取引委員会(※)による指導及び勧告
  • 減額代金の返還
  • 企業名の公表
  • 50万円以下の罰金

特に企業名の公表は洒落にならないですね。

※公正取引委員会とは?

公正取引委員会とは、自由経済社会における公正且つ自由な競争を促進するための日本の行政機関の一つです。
要は、公平な取引を行うための第三者機関です。

国の行政機関としては○○省や××庁というものをよく耳にするかと思いますが、他にも行政委員会という括りがあります。
公正取引委員会は、この行政委員会に当たります。

行政取引委員会は、独占禁止法を運用するために設置された機関で、独占禁止法の補完法である下請法の運用も行っています。
これらの法律を遵守させるために目を光らせ、場合によっては指導や勧告を行っています。

ちなみに、公正取引委員会は委員長と委員4名の計5名から構成されていて、内閣総理大臣により国会の同意を経て任命されています。
その為、他から指揮監督を受けることは無く、独立して職務を全うしています。
取りまとめているのがこの5人という話で、実際に調査・指導などを行う人員は下にいっぱい付きますけどね。

以上、下請法についてでした。