【基礎から学ぶダイオード】 倍電圧整流回路とは? ~トランスを使わずに入力電圧を2倍に昇圧する整流回路~

電気電子
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ダイオードは電流を決められた方向にのみ流すことができる部品です。
なのですが、回路図を眺めていると電流の流れに対して逆方向に接続していることもあります。
ダイオードの基本部分しか知らない場合、この辺りで結構な疑問符が浮かぶと思うんですよね。
ということで、ダイオードの動作原理や種類などを1からわかりやすくまとめてみたのが本記事となります。

今回は、「倍電圧整流回路」についての説明です。

1.倍電圧整流回路とは?

通常、入力交流電圧を昇圧しようと考えた場合、何を使えば良いと想像しますか?
おそらくトランスなのではないかと思います。
電圧変換といったら最も一般的なのがトランスですからね。

なのですが、ダイオードとコンデンサをうまく組み合わせることでも昇圧は可能だったりします。
トランスの場合は交流から交流への昇圧、ダイオードとコンデンサを組み合わせる場合は交流から直流への昇圧という違いはありますけどね。
厳密には、交流を整流してできた脈流を平滑回路に通した結果、入力交流電圧のピーク値の整数倍の直流電圧を得ることができます。
その為、回路構成次第で出力電圧は3倍にも4倍にもすることは可能です。

その中でも、入力の電圧の2倍の出力を得られる回路のことを倍電圧整流回路と呼んでいることが多いです。
ただ、“多い”であって、昇圧の倍数が2倍のものだけ倍電圧整流回路と呼ぶのかは定かではありません。
整数倍になる全ての回路をまとめて倍電圧整流回路と呼ぶのかもしれません。
この辺りの定義は調べてみても曖昧なんですよね。
少なくとも2倍のものは倍電圧整流回路で間違えていないはずなのですが…。

平滑回路の動作については以下の記事にまとめてあるので、併せて確認してみると良いかもしれません。

2.倍電圧整流回路と動作原理

倍電圧整流回路は、以下のような回路になります。

図1

平滑回路の前段にコンデンサとダイオードが1つずつ追加された形になっています。

図2 簡単な平滑回路

交流電源VACは振幅Vm[V]、周期T[s]の正弦波交流で、コンデンサC1及びC2の初期電荷は0[C]とします。
また、コンデンサの静電容量はC1≫C2であり、入力電圧は上向きを正の方向とします。

この時の出力電圧VOの波形の時間的変化について考えていきます。

時間tが0[s]~T/4[s]の時

この時の電流は以下のような経路を通ります。

図3

電源の極性が-側なので、ダイオードD1には順方向電圧がかかります。
ですが、ダイオードD2にとっては逆方向電圧になります。
その結果、VAC→D1→C1という経路に電流が流れることになりますので、C1は充電されます
ただ、C2及びRには電流が流れないので、出力電圧はこの区間では0[V]になります

ここでC1が充電されているのが倍電圧整流回路の肝だったりします。

図4

時間tがT/4[s]~T/2[s]の時

時間tがT/4の時点では、C1が充電されてコンデンサ端子電圧がVm[V]になっています。
そこから時間経過に伴って交流電源の瞬時値の絶対値が低下していくわけです。
要は、D1のカソード側はC1があるのでVmの電源を繋いでいて、D1のアノード側は電圧値がVmから徐々に低下していく交流電源を繋いでいると考えることができます

その結果、電流は以下のような経路を通るようになります。

図5

つまり、D2が順方向になり電流が流れるようになり、C1は放電、C2が充電されるようになります
出力電圧はC1の端子電圧と入力電圧の差分になるので、時間tがT/2[s]時点ではほぼVm[V]になります。

図6

時間tがT/2[s]~3T/4[s]の時

この区間では交流電源VACが0[V]からVm[V]まで徐々に上昇していくことになります。
この時の電流の流れは、時間tがT/4[s]~T/2の時と全く同じです。
違いは、コンデンサC1の端子電圧Vmに電源電圧VACが加算されていくという点です
つまり、回路全体で見ると、入力電圧がVAC+Vmとなるのです。

その為、出力電圧波形は以下のようになります。

図7

出力電圧の最大値が2Vm入力電圧の最大振幅の2倍になりました。

また、出力電圧が2Vmになっているので、C2も2Vmに充電されます

ちなみに、C1の端子電圧であるVm部分は放電しているので、時間経過に伴い少しずつ小さくなっていきます。
最初の条件でコンデンサの静電容量はC1≫C2だと指定した理由はここにあります。
もしC1≫C2になっていなかった場合、C1の放電時の電圧降下が大きくなり、出力電圧が2Vmまで上昇しなくなってしまいます。

時間tが3T/4[s]~T[s]の時

この区間では交流電源VACがVm[V]から0[V]に徐々に減少していくことになります。
その為、序盤は交流電源VAC+C1の端子電圧とC2の端子電圧が拮抗しているのですが、途中から「交流電源VAC+C1の端子電圧<C2の端子電圧」という関係になっていきます
するとどうなるのかというと、D1もD2も逆方向になるので電流が流れなくなります。

その結果、C2→Rという経路にしか電流が流れなくなります。

図8

その為、C2の放電に伴って出力電圧は少しずつ減少していきます。

図9

出力電圧の変化式は以下のようになります。

R-C回路におけるコンデンサの放電に関しては以下にまとめてあるので、ここでの説明は割愛します。

時間tがT[s]以降の時

これ以降は同じ動作を繰り返すだけです。

ただ、時間tが0[s]時点とは違って、C1及びC2には電荷がいくらか蓄えられた状態になります
その為、時間tがT[s]~5T/4[s]の時はC2の放電が維持されます。
また、時間tが5T/4[s]~7T/4[s]の時は、「交流電源VAC+C1の端子電圧>C2の端子電圧」になるまではC2の放電を維持し、「交流電源VAC+C1の端子電圧<C2の端子電圧」になったタイミングでC2は充電されるようになります。

このように、C1とC2がうまい具合に充放電を繰り返すことで、入力電圧の約2倍の電圧値で維持される直流出力を得られるのです。

図10

以上、「倍電圧整流回路」についての説明でした。