今回は「ウィンザー効果」についてです。
1.心理学とは?
前置きとして、心理学とは何なのかを簡単に説明しておきます。
心理学[psychology]とは、人の心/感情や行動の仕組みを科学的に研究する学問のことです。
[phycho]は[心理的な]、[logy]は[学問・研究]という意味なので、そのまま心理学と呼ばれているわけです。
人の心とは、非常に曖昧なものです。
世の中には様々な人がおり、穏やかで人当たりが良い方がいれば、すぐキレて周りのせいにする嫌われ者もいます。
そんな人達に対して『○○して欲しい』とお願いしたとしても、快く引き受けてくれる人・渋々引き受ける人・舌打ちをする人・お願いを断る人等、行動はバラバラで読めるものではありません。
人という括りで、『人の心とはこういうものだ』とは言えないんですね。
ですが、ある程度方向性が決まっていることも無いとは言えません。
例えば、学校のクラスで人気者が集まったグループがあったとして、そのグループの主要人物が『文化祭のクラスの出し物は○○にしよう!』と提案したとします。
それに対して、いつも独りで影の薄い人が『××が良いと思います…』と別の意見を出したとします。
この現場にあなたがいたとしたら、どのように行動するでしょうか?
大半の方は、とりあえず人気者のグループに賛成するかと思います。
これは、無意識のうちに以下のような心情を持ちやすいから起こる行動です。
- 人気者の集団に逆らうようなことはしたくない。
- 人気者の集団に賛同することで自分も人気があるように感じる。
- ボッチと同じだと思われたくない。
言われてみればそうでしょう?
集団生活においては異端者が虐めや仲間外れの的になるものなので、多数の人は同じような思考になりやすいのです。
まあ、全員というわけではないですけどね。
このように、ある条件下では人はどのように行動しやすい・どのように感じやすいといった心理を研究した学問が心理学というわけです。
心理学は、様々な種類があります。
社会心理学・行動心理学・人格心理学・発達心理学・集団心理学・言語心理学・生理心理学・才能心理学 etc.
本ブログではその辺りの種類は問わず、個人的に興味を持った内容についてまとめてあります。
2.ウィンザー効果とは?
ウィンザー効果とは、第三者が発信する情報は当事者が発信する情報よりも信憑性が高いという心理効果のことです。
例えば、会社内で偏屈で有名なおっさんが唐突に自分のことを褒めてきたとします。

最近仕事頑張ってるね…(ニチャア
さて、どう思いますか?
普段は寡黙で、人を褒めるような人ではありません。
非常に怪しいですよね。
何か仕事を任せたいだとか、個人的に金を貸して欲しいだとか、何かしらの裏があるようにしか思えません。
ですが、同僚から『あのおっさん、なんかお前のこと褒めてたよ?』と言われたらどう思いますか?
おっさんがそもそも自分のことを褒めていたという事実を疑うよりも、『えっ!あのおっさんが私のことを褒めてたの!?』と思うのではないでしょうか?
これがウィンザー効果です。
何故こんなに捉え方が変わるのかというと、情報の発信者が異なるからです。
おっさんが自分のことを直接褒めたとすると、その行動をする理由が何かあるかもしれません。
では、同僚にとっておっさんが誰かのことを褒めていたと話すメリットは何でしょうか?
何もありませんよね??
だから、第三者から発信された情報だと比較的すんなりと受け入れてしまうのです。
他の最たる例は、口コミやSNSといった第三者の情報です。
どこかしらの飲食店に初めて行く場合、来店前に店の情報を仕入れる人は多いでしょう。
営業時間から始まり、メニュー・おすすめ・込み合う時間・利用者の年齢層・ランチやディナーセットの有無など、知りたい情報はいくらでもありますからね。
そんな時に、口コミを確認する人は少なくないかと思います。
最近はサクラの書き込みなどによって信憑性の薄れてきた口コミですが、口コミは本来サービスの利用者が思ったままの感想を書き込んだものとなります。
利用者の生の意見を聞けるので、「○○が美味しかった」という店にとって有利な情報の他に、「テーブルの清掃が行き届いていなかった」・「店員の接客態度が良くなかった」などの店にとっては不利になる情報まであります。
仮に飲食店側が「清掃は徹底しています」と発信していたとしても、口コミレビューで何人もの人が「店内が汚い」と言っていたら、口コミレビューを信じるでしょう?
それは、実際に利用した人が忖度の無い中立的な視点から評価した結果、店が汚いと感じているからです。
口コミを書く側は、飲食店を褒めても貶しても、その結果に対して一切の利益・メリットがありません。
それゆえに、情報提供者である第三者が態々嘘をつくメリットは無く、情報の信憑性が高くなるというわけです。
飲食店側は来客して欲しいわけですので、店の悪いところを発信するわけないですからね。
サクラレビューをすることで利益が出る人たちは嘘の情報を書きまくりますけどね。
このように、「第三者の情報は評価者の中立的・客観的なものであることが多いので、当事者からの情報発信よりも信頼できる」というロジックがウィンザー効果というわけです。
口コミ・レビュー・モニター・アンケート・インタビュー等、様々な形で私たちの身の周りで頻繁に用いられているマーケティング戦略がウィンザー効果を狙ったものなので、ついでにその効果の名称もここで覚えておきましょう。
3.ウィンザー効果の副次的な効果
ウィンザー効果には、副次的な効果もあります。
先程挙げた同僚からの間接的なおっさんの褒めちぎりですが、もしこれを繰り返されたらあなたはどう思いますか?
想像してみてください。

あのおっさん、なんかまたお前のこと褒めてたよ?

私も聞いた。
別に他の人のことは褒めてないんだけど、なんだろうね?
そう、おっさんのことを好きになってくるんですよ。
好きになるは飛躍し過ぎですが、少なくともおっさんに対しての印象は良くなるのではないでしょうか?
これがウィンザー効果の副次的な効果、無意識下での好意の返報性です。
単純な話、自分に好意的な反応をしてくれる人がいたら、その人を嫌いになろうとは別に思わないでしょう?
その心理がウィンザー効果によってより引き立てられて、自分のことをすごい褒められているように感じてしまうんですね。
その結果、おっさんのことをそんなに嫌いではなくなりやすいのです。
『確かに…!』と思った方がいたら、好意を持っている相手に対してウィンザー効果で畳みかけてみるのもいいかもしれませんね(笑)
Aさんに好意を持っているとしたら、Aさんが居ないところでAさんの親友に向けてAさんを褒める発言をしてみましょう。
それまでAさんが自分に対して無関心だったとしても、好意的になってくれるかもしれませんよ?
それで好きになってくれるかは見た目と人柄によるけどね。
以上、「ウィンザー効果」についてでした。