今回は、「変位センサ」についての説明です。
1.初めに
センサとは情報をデータに変換して出力する装置のことです。
動物は目で見た情報・耳で聞いた情報などを脳で処理しているわけですが、ここで言う目や耳に当たる部分がセンサです。
機械にとっての目や耳みたいなものということですね。
例えば、光の照射有無・温度の変化・応力の変化・速度の変化なんかの情報をデータに変換しています。
最近はなんでもかんでもセンサで取り込むようになっていて、そのおかげで以下のようなことが実現できています。
- 体温を測ったら自動的にPCに結果を保存する。
- 農場にて時間経過や湿度状況によりスプリンクラーを起動させる。
- 家に居なくても子供やペットの様子をカメラで確認できる。
- リアルタイムの渋滞情報を受け取ってカーナビに表示する。
いつの間にやら当たり前のように実現しているこれらの事柄は、センサを利用しているからこそできるようになっているのです。
このような試みのことはIoTと呼びます。
では、変位センサはどんな役割をしているのかというと、物体の変位量(移動量)を測ることができます。
変位量から対象の厚み・高さ・幅などの寸法を調べることも可能です。
変位(位置の変化もしくはその変化の量を指す)に関するセンサなので、名前通りの役割ですね。
物体が始点からどの程度移動したかという距離を求めたり、物体自体の厚さなどを計測することも可能です。
どの程度移動したかがわかるということは、始点合わせ(位置決め・位置合わせ)にも使えますね。
測定方式には光・磁界・音波などを利用した非接触式のものや、実際に接触させて計測を行う接触式のものがあります。
同じような役割のセンサに測長センサというものがあります。
名前からすると長さを測るセンサだから同じものに感じますね。
「変位」と「測長」は似たような意味なので混同してしまいそうですが、変位センサは対象の変位量、測長センサは対象の位置を検出する為のセンサなので、厳密には違うセンサです。
ただ、どちらも結局寸法を測れるので境界が大分曖昧です。
2.変位センサの原理と種類
変位センサの測定方法には、光・磁界・音波などを利用したものがあると述べました。
それらの素子を用いた中にも種類が多数存在するので、ここでは主要なものをいくつか説明していこうと思います。
光学式
三角測距という方法で計測する。
投光部から発した光をレンズで集光して対象に向けて光を照射し、対象からの反射光を受光部で受け取ることで変位量を算出する。
反射角度が対象との距離に応じて変化するように設計されているので、受光部のどの辺りに光が反射してきたかによって対象との距離を逆算します。
レーザ変位センサとも呼ばれる。
受光素子としては、PSD・CMOS・CCDなどを使用したタイプがある。
PSD…[Position Sensitive Device]、直訳で「位置に敏感なデバイス」。
CMOS…[Complementary Metal Oxide Semi-conductor]、直訳で「相補型金属酸化膜半導体」。
CCD…[Charge Coupled Device]、直訳で「電荷転送素子」。
PSD方式は反射光を受光部が捉えた位置から変位量を算出するタイプ、CMOS方式・CCD方式は受光した際の光量を画素として検出して変位量を算出するタイプです。
CMOS・CCDは画像センサに使用される受光素子です。
なので画素という概念が出てきたわけです。
一般的にはPSD方式よりもCMOS方式・CCD方式の方が高精度。
ちなみに、CMOSとCCDで性能を比較すると以下のようになります。
CMOS | CCD | |
---|---|---|
消費電力 | 小 | 大 |
感度 | 悪 | 良 |
コスト | ◎ | ✕ |
画質 | 悪 | 良 |
LEDから照射される白色光(白色LED)をレンズで分光し、同波長ごとに違う箇所で焦点を結ぶことで対象との距離を計測する。
ファイバ同軸変位センサとも呼ばれる。
白色光は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色に分光されます。
なので、レンズで特定の波長ごとに分光して焦点を結び、対象に照射されて反射した光の色の情報から対象との距離を把握しています。
「この位置に対象があれば反射光は〇色」というように決まっているイメージです。
白色光について詳しく知りたい場合は以下も併せて確認してみてください。
分光して焦点を合わせる機能はセンサヘッド部分、白色光の投光部・受光部・処理部はコントローラ部分という構成になっています。
センサのヘッド部分は焦点を合わせる為のレンズ以外に電子部品などは存在しないので、センサヘッド部分は比較的小型で済む。
光を利用して対象の断面形状を計測する。
対象に広い帯状の光を照射し、反射光を受光部で受け取ることで計測を行っている。
光を照射するだけで計測できるので、対象を動かす必要はない。
原理自体は三角測距式と同じ。
リニア近接方式
近接センサを用いて電磁誘導で変位を検出する方式。
コイルに電流を流すと磁束が発生します。
この磁束が対象(金属)に干渉すると、対象にはコイルが発生させた磁束の変化を妨げる向きに磁束を発生させます。
すると、コイルのインダクタンスが変化するので、この変化量から対象との距離及び変化量を計測しています。
電磁誘導が関係してくるので、対象は金属製である必要がある。
電磁誘導について詳しく知りたい場合は以下も併せて確認してみてください。
※渦電流式変位センサという種類もおそらく同じ部類です。
超音波方式
超音波を利用して計測する。
対象に向けて超音波を発信し、その反射波を受信することで対象との距離を計測する。
音波の速度と反射してくるまでの時間から算出している。
接触方式
対象に直接接触することで計測する。
磁界を利用したタイプ(差動トランス型)やアクチュエータ・エアシリンダを利用したタイプなどがある。
実際に接触する為、非接触方式(光・磁界・音波などを利用したもの)と比べて精度が高い。
ただ、接触するので非接触式より傷つきやすく、寿命は短めになる。
ここで紹介したもの以外にも色々な種類があります。
光を利用したものがオールマイティな感じですね。
3.変位センサと測長センサの性能特性
変位センサ・測長センサの性能特性を表す指標として、おおまかにリニアリティ(直線性)・繰り返し精度・分解能といったものがあります。
変位センサ・測長センサの選定時に気にするべき項目なので、どれが何を表しているのか簡単にイメージできるようにしておきましょう。
・リニアリティ(直線性)
計測した値に応じた電気信号が変位センサから出力されるわけですが、理想は計測量(変位量や距離)と電気信号(電圧値や電流値)の出力は比例の関係にあります。
あくまで理想です。
電源に理想電源というものがあるのと同様に、実際の関係は理想通りの完全な直線にはならずにわずかに曲線を描きます。
曲線を描くということは、理想直線とズレが生じますよね?
このズレが測定値に対してどの程度の影響を与えているか、どの程度の誤差が生じるのかという程度を表したものをリニアリティ(直線性)と呼びます。
リアリティ(現実性)ではないですよ?
±1%F.Sのような表記があったら、それはリニアリティのことです。
「FullScale(フルスケール)に対して誤差が±1%になりますよ~」という表記です。
なので、検出距離と出力信号の関係を表すグラフなどがあった時は、リニアリティの表示を念頭に入れておきましょう。
・繰り返し精度
端的に言えば再現性のことです。
何度も計測を繰り返した時、どの程度同等の計測結果を得られるかという尺度を表しています。
何度繰り返しても同じ値が計測できるので計測の精度が高い、と言いたいわけです。
ただ、精度が高いと繰り返し精度が高いでは意味が異なることに注意は必要です。
例えば、実際の数値に対して-10%程度の値を繰り返し検出していた場合、同じ結果が得られているので繰り返し精度は高いですが、本来の数値に対して-10%という実態からは精度が良いとは言えません。
精度という言葉は正確な値を検出しているかという具合を表しているようなものなので、次に説明する分解能とは似て非なる言葉となります。
・分解能
分解能という言葉はモータなどセンサ以外の機器でも出てくる言葉です。
センサにおける分解能は簡単に言えば“感度”に相当し、どのくらい敏感に測定をできるかという指標だと思ってくれれば良いです。
1mm単位で計測できるスケールと0.1mm単位で計測できるスケールでは、後者の方がより正確な値を計測できますよね?
なので、0.1mm単位で計測できるスケールの方が分解能が高い・良いということになります。
考え方はこんな感じです。
分解能は応答時間を長くしたりサンプリング回数を多く設定することで向上します。
より時間をかけて丁寧に計測、試行回数を重ねてバラツキをなくすわけなので当たり前ではあります。
ですが、応答時間が長くなると信号を受け取る側の機器との通信がうまく合致せずにタイムアウトする可能性もあります。
そんな場合は単純に高価で分解能が高いセンサを選定すれば良いんですけどね。
以上、「変位センサ」についての説明でした。