【基礎から学ぶ電気回路】 V結線回路と利用率 ~2つの電源での三相交流回路の組み方~

電気電子
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交流には単相交流と三相交流が存在します。
この内、単相交流は一般家庭のコンセントに供給されていますが、三相交流は一般家庭で見かけることはありません。
三相交流は電気系の専門性が高くなるのです。
本記事では、そんな三相交流を理解できるようになることを目的としています。

今回は、「V結線回路と利用率」についての説明です。

1.ポイント

V結線回路

Δ結線回路の3つの電源の内1つを除去して2電源にした回路。
全電源容量の86.6%までなら使用が可能。
この数値のことを利用率と呼ぶ。

2.V結線回路とは?

三相交流回路の結線方法は2種類あります。
スター結線デルタ結線です。
スター結線はY結線、デルタ結線はΔ結線とも呼びます。
どちらの回路も当たり前ですが3つの単相交流電源を使用しています。

このΔ結線回路の3つの電源の内1つを除去して2つの電源にした回路というものが存在し、その回路のことをV結線回路と呼びます。
V結線回路は2つの電源を上手いこと三相負荷に繋いでいます。

今回は、そんなV結線回路に関して記述していきます。

3.V結線回路の繋ぎ方

Δ結線回路は図1のような繋ぎでした。

図1

それに対してV結線回路は図2のような繋ぎになります。

図2

見てわかる通り、変化点はΔ結線回路におけるEcとV結線回路における-(Ea+Eb)の部分だけです
Δ結線回路の3つの電源の内1つ(ここではEc)を除去して2つの電源にした代わりに、元々Ecを繋いでいた線を残りの2つの電源(Ea及びEb)に繋ぎ変えたのがV結線回路となります。
繋ぎ自体は結構単純なのです。

4.V結線回路の電圧のベクトル図

繋ぎ方は理解できたかと思いますが、なんでこの繋ぎ方で回路として成り立っているのかはおそらくよくわからないのではないでしょうか?
電流の流れは変わっていませんが、電圧は『なんだこれ?』という感じでしょう。

ということで、V結線にした場合の電圧のベクトル図を見てみましょう。

Eaを基準としてベクトル図を描いていきます。

図3

EaEbは位相差が2π/3(120°)なので、その2つだけベクトル図を描くと図3左のようになります。
-(Ea+Eb)のベクトルはEa+Ebのベクトルを180°反転させたものなので、図3右のようになります。
つまり、なんだかんだで2つの電源にしても対称三相交流電源と同様になっているのです。
なので、V結線にしてもΔ結線と同じく線間電圧=相電圧の関係を築いていることになります。

5.V結線回路の電源の利用率

V結線回路でも三相負荷に電力を供給できることは説明しました。
ただ、1つの電源が除去されているだけあって供給できる電力は制限されてしまいます

どの程度制限されるのかというと、線間電圧をVl、線電流をIl、相電圧をVp、相電流をIpとした時、Δ結線回路の三相有効電力はPΔ3VpIpcosθ=√3VlIlcosθでした。
それに対し、V結線回路の三相有効電力はPV√3VpIpcosθ=√3VlIlcosθとなります。

この関係は、Δ結線回路では線間電圧=相電圧且つ線電流=√3×相電流であったのに対し、V結線回路では線間電圧=相電圧且つ線電流=相電流になってしまっていることに起因するのだと思われます。
図2を改めて見てみるとわかると思うのですが、V結線回路にするとしれっと線電流=相電流になるんですよね
Eaに流れる相電流と線電流Iaは同じになっているでしょう?

なので、PVとPΔの比を求めると、PV/PΔ=√3VpIpcosθ/3VpIpcosθ=1/√3≒0.577となり、Δ結線回路に対してV結線回路は57.7%の容量になってしまいます

また、電源2つの容量は2VpIpcosθであるのに対し、V結線回路を組んだ場合の最大容量は√3VpIpcosθになります。
つまり、最大容量/電源2つの容量=√3VpIpcosθ/2VpIpcosθ≒0.866となり、V結線回路の場合は本来の電源容量の86.6%までなら使用可能だということがわかります
この数値をV結線回路の電源の利用率と呼びます。

以上、「V結線回路と利用率」についての説明でした。