【基礎から学ぶ電気回路】 短絡と開放とは? ~短絡による発火現象のメカニズムについて~

電気電子
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電気電子系は難しいイメージを持たれがちですが、基本から順番に抑えていけばそれほど難しいものではありません。
どんな分野にも言えることですが、最初はよくわからないものですから。
本記事では、電気初心者の方でもわかりやすいように、電気回路を理解するための基本中の基本から順を追って解説していきます。
まずは、直流回路についてです。

今回は、「短絡と開放」についての説明です。

1.ポイント

短絡

電位差のある2点間を抵抗値の小さな導体で接続した状態のこと。

開放

回路の一部が途切れている状態のこと。

2.短絡とは?

電源に抵抗が一つ繋がった単純な回路があったとします。

図1

この抵抗Rの両端である端子AB間には、電位差がE[V]あります。
この時、端子AB間を図2のように直接電線で接続したとします。

図2

この状態のことを短絡またはショートと呼びます。
言葉では、「抵抗Rを短絡させる」と言います。

図2のように抵抗Rを短絡させると何が起きるのかというと、抵抗Rにほぼ電流が流れなくなります
電線も抵抗値を持ちますが、電流を流すための経路なので当然抵抗値は低いです。
結果、抵抗Rにはほぼ電流が流れず、電線側にほぼ全ての電流が流れてしまうのです。

例えば、目の前にちょっと渋滞している道と全く混んでいない道があったとしたら、あなたはどちらの道を通りますか?
混んでいない道を通るでしょう?
この考えが電気回路にも適用できて、電流の流れを妨げようとしている渋滞した道(抵抗R側)と電流の流れをほぼ妨げる気が無い空いた道(導線側)が目の前にあったら、電子はみんな導線側を通るんです。

通常時(図1)に回路に流れる電流はオームの法則よりE/Rです。

では、短絡した状態(図2)で回路に流れる電流はどうなるでしょうか?
電線の抵抗は非常に小さいので、そちらにほぼ流れてしまうと述べましたよね?
つまり、E/RのR部分がほぼ0Ωになるようなものなので、かなりの大電流が流れてしまいます。
短絡・ショートと言うと、火花が発生したり電線が発火したりといったトラブルをイメージする方が多いと思うのですが、これらの現象はこの大電流が原因です
電線には電流を流せる上限(定格という)が定められているので、電流が流れ過ぎて耐え切れなくなって発火しているのです

短絡した結果大電流が流れて火花現象や発火に結びつくことがありますが、それは短絡の副次的な効果を指しています。
抵抗の繋がっている経路をすっ飛ばして回路がショート(short:短い)になってしまうからショート、短く絡んだ回路構成になってしまうから短絡というわけですね
語呂合わせで覚えてしまいましょう。

3.開放とは?

開放とは、短絡の反対の現象のことです
つまり、文字通り回路を開放します。
読んで字の如く、回路を切ってしまうことを指しているのです。

図1の抵抗Rを開放すると、図3のようになります。

図3

電源に抵抗が繋いである回路において抵抗を開放すると言った場合、抵抗部分を取っ払って回路が繋がっていない・開いた状態になるだけです
回路が途切れるんですね。
回路は、電源のプラス側からマイナス側に繋がって“閉じる”ことで初めて電流が流れます。
なので、抵抗Rで開放された回路には電流が流れなくなります
短絡は危険を伴いますが、開放は回路が動作しなくなるだけなのがまだ幸いですね。

例えば、暑いから扇風機を付けようと思ってスイッチを押したら、扇風機が動かなかったとします。
よく見ると、コンセントに電源コードが繋がっていません。
これ、開放です。
コンセントから電源を供給するという回路があって初めて扇風機は回りますので、コンセントに電源ケーブルを挿し忘れることで回路が断絶しちゃっているんですね。

4.実際の短絡の事例

具体的にはどんな時に短絡が起こるのか記述していきます。

なぜ短絡の事例だけなのかというと、開放の事例はただ単にケーブルを接続していないだけだったりするので、解説する意味が無いんですよ。

身の回りには色んな電線やケーブルが張り巡らされています。
※電線とケーブルは厳密には違うものなのですが、以降は電線で呼び名を統一します。
スマートフォンの充電には電線が必要ですし、家電を動作させるためには電線をコンセントと繋ぐ必要があります。
家の外でも電信柱と電信柱の間に電線が存在し、変電所から引っ張ってきている電気が中を通っています。

そんな電線たちは、電気を通す物質である導体を電気を通さない物質である電線被覆(絶縁体)で覆って構成しています。
なのですが、経年劣化で電線被覆の絶縁性が低下したり、カッターでの切創のような何らかの理由で電線被覆が傷ついて導体が露出していることがあります。
そうして絶縁性の無くなった箇所に別の導体が触れることで短絡するのです

車の場合、度重なる屈折とエンジンの振動によって電線被覆に亀裂が入り、隣り合う電線通しで短絡して発火したという事例もあったりします。
隣り合っていなくても、雨水やジュースがかかったのでそれを媒体にして短絡するなんてこともあります。
まあ、そう簡単には起きる現象ではありませんけどね。
でも、不具合事例としてジュースをこぼして短絡したとか腐食したとかということは多々あるので、注意はするに越したことはないと思います。

以上、「短絡と開放」についての説明でした。