【基礎から学ぶ光電素子】 半導体レーザとは? ~半導体に電流を流してレーザ発振させる素子~

電気電子
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私たちの身の周りには、電気エネルギーと光エネルギーとの間で変換が可能な部品が存在します。
有名なものとしてはLED…発光ダイオードが挙げられます。
最近では電球型のLEDなんかも市販品として普及しているので、一般人でも手に取る機会は増えているかと思います。
そんなLEDですが、分類としては“光電素子”というものになります。
光電素子には様々な種類が存在しますので、その構造や動作などについてわかりやすくまとめていこうと思います。

電気の仕事をしていると様々な部品を用いる機会が出てきます。
コイル・コンデンサ・IC・コンバータ・パワーサプライなどなど…名前は聞いたことあるけどイマイチ何なのか理解していないものもあるのではないでしょうか?
この記事では、そんな部品について基本からわかりやすく解説していけたらと思っています。
機械部品に関する記事も混ざってたりしますが、深く考えないでください。

分類するのが面倒だっただけです。

今回は、「半導体レーザ」についての説明です。

1.半導体レーザとは?

半導体レーザとは、LEDと同じく順方向電圧(特定の方向の電圧)を印加することで発光するダイオードのことです。
発光ダイオードであるLEDとは別物です。
どちらも発光原理は同じですが、放出する光のタイプに違いがあります。

半導体レーザはレーザダイオード[Laser Diode]とも呼ばれます。
LDと省略されていることもあります。
レーザ[LASER]とは、[Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光の増幅)]の頭文字を取ったものです。
レーザ光線・レーザビームとかの“レーザ”の正式名称がこれです。

LED同様pn接合ダイオードに順方向電圧をかけるという点は同じですが、明確な違いがあります。
今回は、その辺りも含めて順番に説明していきます。

2.半導体レーザの構造と原理

半導体レーザの構造は、以下のようになっています。

図1

n型半導体及びp型半導体に活性層(壁面がミラー状になっている)と呼ばれる層を挟み、それをn型基板の上に作っています。
n型半導体及びp型半導体の層をクラッド層、n型半導体-活性層-p型半導体のサンドイッチのような構造をダブルヘテロ構造と呼びます。
なんでわざわざそんな名前を付けているのかは不明です。

まず、n型クラッド層がマイナス、p型クラッド層がプラスになるように電源を繋ぎます。
すると、n型クラッド層からは多数キャリアである電子、p型クラッド層からは多数キャリアである正孔が活性層側へ移動します。
この移動したキャリアは、活性層内で再結合します。
この際、電子が持っているエネルギーが光に変換されて失われます。
この時点では、クラッド層の屈折率が活性層より低く、活性層の壁面はミラー状になっているので、光が活性層内に閉じ込められています。

電子が元々持っていたエネルギーと再結合によって放出されるエネルギーの差のことをエネルギーギャップと呼びます。
このエネルギーギャップにより、放出される光の波長が変化します。

発光の仕組みは以上ですが、ここからが半導体レーザならではの動作となります。

まず、活性層のどこかで一度再結合が発生したとします。
すると、その再結合が引き金となり、周りでも同様に再結合が連鎖していきます。
この現象を誘導放出と呼びます。
[LASER]の[SER(Stimulated Emission of Radiation / 誘導放出)]の部分ですね。

誘導放出すると何が起こるのかと言うと、全く同じ位相・波長の光を作り出すことができます
エネルギーギャップが同じですからね。

また、活性層の壁面はミラー状になっているので、生成された光が反射して、更に誘導放出が発生して光が増幅されていきます。
この現象をレーザ発振と呼びます。

そうして一定以上の強さに増幅された光を放出するのが半導体レーザです。
こうすることで、位相・波長が揃った強い光を生み出すことができます。

活性層の表面がミラー状になっているのにどこから光が放出されるのかが疑問になるかと思いますが、100%光を反射する箇所と数%光を通して残りを反射する箇所を設けることで、一定方向のみに光を放射できるようにしているようです。
製品タイプによってこの辺りの仕組みは微妙に異なりますけどね。

3.半導体レーザとLEDの違い

次は、半導体レーザと同じ発光素子であるLEDとの違いについて説明していきます。
半導体レーザもLEDも光を放出するわけですが、光を放出させるまでのメカニズムが異なります。

まず、半導体レーザもLEDも一番最初の発光原理自体は同じです。
pn接合ダイオードに順方向電圧を印加したので回路内をキャリアが循環し、電子と正孔が再結合して光が発生します。
ただ、その光をどう放出しているかに差があります。

半導体レーザは先程説明した通り、同じ位相・波長の光を合わせて増幅してから放出する誘導放出形式になっています。
それに対してLEDは、位相・波長を合わせたりすることなくそのまま光を放出する自然放出形式になっています。
その為、放出される光のタイプが全く異なります。
つまり、半導体レーザは同波長の光がまとまっているので細いビーム状の強い光に、LEDは光の位相・波長にバラつきがあるので拡散された光になります。
スポットライトのようにピンポイントで光を当てたいなら半導体レーザ、照明のように万遍なく照らしたい場合はLEDという具合に使い分けるわけです。

LEDは専ら照明用として使用されますが、半導体レーザは医療・通信・加工・センサ・測定器など、本当に様々な分野で使用されています。

4.半導体レーザの種類

基本的な構造は同じなのですが、半導体レーザにはいくつか種類があります。

FP型(ファブリペロー型)半導体レーザ

最もシンプルな構造の半導体レーザ
FPは[Fabry Perot]の略称なので、ファブリペロー型半導体レーザとも呼びます。

構造と原理の説明をした際の図1がFP型に当たります。
レーザ光の位相・波長が同じになるのが半導体レーザだと説明しましたが、FP型だと実際は微妙に波長に差が出てしまいます。
その結果、複数パターンの波長にて発振します。つまり、若干拡散してしまうのです。
その為、長距離通信用途には向いていません。

図2

DFB型半導体レーザ

FP型の欠点である複数の波長で発振してしまう現象を改善させたタイプ
クラッド層と活性層の界面に回折格子(※)というギザギザの面を設けます。
この回折格子に光が当たると、光の波長が回折格子幅の2倍になるという特性があります。
その為、発生している光が回折格子の格子幅の2倍の波長唯一つになり、単一波長のレーザ光が作れるわけです
これで長距離通信も問題なくなるのですが、クラッド層と活性層の界面に回折格子を成形するのは難しいので高価になりがちという欠点があります。

図3

回路格子とは、多数のスリットを等間隔で配置する構造のことです。
この構造にすることで、光を増幅することができます。
グレーティング[grating]とも呼ばれます。
光を回折させるためにスリット(隙間)の連続を格子状(周期的な並び)に配置しているから回折格子です。

FBG波長安定化半導体レーザ

半導体レーザとしてはほぼFP型を使用し、発生した光を光ファイバのコア内に回折格子を形成したモノを通すことで単一波長のみのレーザ光を作るタイプ
この光ファイバのコア内に形成した回折格子のことをFBG[Fiber Bragg Grating]と呼びます。

FBGは低反射率になっていて、入ってきた光の内、特定の波長のみ反射します。
こうすることで、活性層の片面とFBG間で特定の波長のみ反射を繰り返して、その単一の波長の光によって活性層内で誘導放出が発生します。
場所によってHRコート(増反射膜[High Reflection Coating]、反射する光の波長などの光学的な特性や電気的な特性などを変化させることが可能)とARコート(反射防止膜[Anti Reflection Coating]、その名の通り反射防止効果を持つ)を施すことで、うまく光が循環・増幅されるようになっています。
その結果、増幅された単一波長の光が生成されます。
そして、FBGは低反射率なので、増幅された単一波長が通過してレーザ光として出力されます。
簡単に言えば、DFB型をFP型と外付けのFBGで再現したようなものです

DFB型は高価なので、同じような性能で安価に作る方法としてこのタイプが存在します。

図4

ちなみに、FBGを使用して反射光を分析するセンサなんかも存在するようです。

5.半導体レーザの特徴

半導体レーザの大きな特徴は以下の2点です。

①干渉性が高い
干渉性とは、位相の揃い具合のことです。
原理の説明で述べた通り、半導体レーザは位相の揃った波長を作り出して増幅するので、干渉性が高いです。

②指向性が高い
指向性とは、放射するエネルギーが方向によって異なる性質のことです。
半導体レーザは一方向に強力な光を放出するので、指向性が高いです。
その為、制御しやすいというメリットがあります。
ビーム状の光を作るための最低条件みたいなものですね。

他の特徴としては、小型・軽量・変換高効◎・応答速度◎といったものが挙げられます。

6.半導体レーザの色

光は、人間の目には波長によって違った色に見えます。
その辺りの詳しい説明はここでは割愛します。
気になる方は以下の記事を参考にしてください。

半導体レーザは、同じ位相の光を増幅して放出していると述べました。
つまり、発生させる光の波長を変化させれば色も変化します。

では、どうすれば光の波長が変わるのかというと、使用する半導体材料に依存します。
※LEDも同様。

まとめておこうかとも思ったのですが、あまり重要ではない上に『この材料ならこの色になる』という一対一の関係になっているわけでも無いので控えておきます。
大体Ga(ガリウム)の化合物が使用されています。
なので、ガリウムを含む化合物を使用し、化合物によって波長の異なる光を放つから色が違って見えるという部分だけ覚えておくと良いかと思います。

以上、「半導体レーザ」についての説明でした。