今回は、「無効電力のイメージ(コイルで無効電力が発生する仕組み)」についての説明です。
目次
1.皮相電力・有効電力・無効電力について
皮相電力・有効電力・無効電力って知っていますか?
本ブログでも解説はしているのですが、それぞれ以下のようなものを表しています。
- 皮相電力は、実際に消費される電力ではなく、見かけ上の電力。
- 有効電力は、負荷で実際に消費される電力。
- 無効電力は、仕事をせずに電源に回帰する電力。
この説明を見て、どう思いましたか?
私は、無効電力だけイマイチ理解できなかったんですよね。
皮相電力は、実際に供給された電力です。
そして、有効電力は実際に消費された電力です。
この2つは普通に意味を汲み取れるのですが、無効電力だけ“仕事をせずに電源に回帰する電力”という変な言い回しをしているんですよね。
ということで、今回はコイルにおける無効電力について解説していこうと思います。
2.コイルで無効電力が発生する仕組み
コイルの基本的な性質は、以下の通りです。
コイルに電流が流れると、コイルを貫くように磁束が発生する。
コイルに流れる電流が変化すると、それに付随してコイルを貫く磁束も変化する。
コイルを貫く磁束が変化すると、その変化を妨げる働きをする。
コイルに流れる電流を増加させた場合は、コイルを貫く磁束が増加します。
コイルを貫く磁束が増加した場合、磁束が増えないように供給されている電流を妨げる向きに逆起電力を発生させます。
その結果何が起こっているのかと言うと、コイルに磁気エネルギーが蓄えられています。
逆に、コイルに流れる電流を減少させた場合は、コイルを貫く磁束も減少します。
コイルを貫く磁束が減少した場合、磁束が減らないように供給されている電流と同じ向きに起電力を発生させます。
ここで発生している起電力は、先程コイルに蓄えた磁気エネルギーから賄われます。
コイルに流れる電流が増加すると磁気エネルギーが蓄えられ、コイルに流れる電流が減少すると磁気エネルギーが消費されるのです。
つまり、コイルの性質はコイル内で発生している磁気エネルギーが地産地消されることで実現されているのです。
ここで思い出してほしいのですが、無効電力は“仕事をせずに電源に回帰する電力”のことでした。
この説明に磁気エネルギーが合致しているんですよ。
“仕事をせずに電源に回帰する電力”というと難しく考えてしまいますが、言い換えると“負荷を動かすために消費されずに回路に戻ってくる電力”になります。
コイルの磁気エネルギーは、コイルに電流が流れると蓄えられ、コイルに電流が流れなくなると蓄えられた分が消費されます。
コイルという負荷を動かすために蓄えられているのではなく、性質として勝手に蓄えられ、勝手に還元されているんです。
だから、コイルで言うところの無効電力は磁気エネルギーのことを指しているのです。
3.実際の動き
コイルの無効電力は電流の変化によって生じる磁気エネルギーのことだとわかりました。
なので、次は実際の動作についてもう少し深堀りしていこうと思います。
そもそも、電流が変化しないと無効電力が発生しないわけですので、直流の場合は無効電力は発生しません。
交流のように変化がある場合に無効電力が発生します。
ということで、正弦波交流電圧がコイルに掛かった際の動きについて見ていきます。
①電圧が0から+VPに達するまでの動作
まずは、コイルに何も電圧が掛かっていない状態からプラスのピーク値である+VPになるまでの動きについてです。
コイルに掛かる電圧が増加するということは、コイルに流れる電流が増えるということです。
そうなると当然コイルを貫く磁束も増えるので、コイルには逆起電力が発生し、磁気エネルギーが蓄えられることになります。
その為、コイルに掛けた電圧に対してコイルが発生させる電流は、以下のような関係になります。

図1において、コイルに左から右方向に電圧が掛かってる時を正方向と定義しますね。
電圧が掛かり始めると電流の流れを妨げようと逆方向(極性がマイナス)の電流を発生させます。
そこから電圧が+VPに近づくにつれてコイルに掛かる電圧の変化は薄れていくので、+VPに達した際には電圧の変化量が0になります。
その為、+VP地点ではコイルの働きで発生する電流も0になり、磁気エネルギーがプラス方向に最大限蓄えられた状態になります。
②電圧が+VPから0になるまでの動作
今度はコイルに掛かる電圧が+VPから0に向けて減っていきますので、コイルに流れる電流が減っていくことになります。
そうなるとコイルを貫いていた磁束が減るので、コイルの磁束が減らないように磁気エネルギーを消費して回路に電流を戻す動きをします。
その結果、本来コイルに流れている電流に加算させるような向きに電流を発生させることになる為、プラス方向の電流を発生させることになります。
その関係を図示すると、以下のようになります。

コイルにかかる電圧は小さくなっていきますが、コイルが発生させる電流は増えるのです。
また、コイルに掛かる電圧が0になった時点で、コイルに蓄えられた磁気エネルギーは回路にすべて戻し終えた状態になります。
溜めた分吐き出しただけですね。
③電圧が0から-VPに達するまでの動作
次はコイルに掛かる電圧が逆方向になっていくわけですが、向きが反転するだけで考え方は①と全く同じです。
向きが反転しただけでコイルに掛かる電圧が増加していることには変わりはありませんので、コイルに流れる電流も増えます。
そうなると当然コイルを貫く磁束も増えるので、コイルには逆起電力が発生し、磁気エネルギーが蓄えられることになります。
その為、コイルに掛けた電圧に対してコイルが発生させる電流は、以下のような関係になります。

①ではコイルに左から右方向に電圧が掛かっていて、この向きを正方向と定義していました。
なので、③の場合はコイルに右から左方向に電圧が掛かるようになるだけです。
コイルに対して右から左方向に+VPの電圧が掛かるという表現と、コイルに-VPの電圧が掛かるという表現はイコールなのです。
プラスとかマイナスと捉えるからわかりづらいだけで、図1と図3を見比べると何も難しいことは言っていないとわかるでしょう?
電圧・電流の掛かる向き、発生する磁束の向きが反転しているだけなのです。
④電圧が-VPから0になるまでの動作
後は電圧が-VPから0になるまでの動作についてですが、これはもう説明が不要でしょう。
②の向きが反転した動作をするだけです。
一応説明すると、実質コイルに掛かる電圧が+VPから0に向けて減っていきますので、コイルに流れる電流が減っていくことになります。
そうなるとコイルを貫いていた磁束が減るので、コイルの磁束が減らないように磁気エネルギーを消費して回路に電流を戻す動きをします。
その結果、本来コイルに流れている電流に加算させるような向きに電流を発生させることになります。
その関係を図示すると、以下のようになります。

④の動作においては、向かって右から左方向に電流が流れている為、コイルが発生させる電流の向きも右から左方向になります。
そうして、コイルに掛かる電圧が0になった時点で、コイルに蓄えられた磁気エネルギーは回路にすべて戻し終えた状態になるわけです。
これが、コイルに正弦波交流電圧を掛けた場合の動作です。
磁気エネルギー(無効電力)を蓄えて、蓄えた分だけ回路に還元して、また蓄えて…とずっと繰り返しているんですね。
ちなみに、コイルに電圧を掛けると電流の位相は90度遅れると聞いたことがあるかもしれませんが、なんでそうなるのかは図1~図4で説明済みだったりします。
電圧波形の位相に対して、何秒か経過しないと電流の位相は揃わなくなっているでしょう?
だから、電圧に対して電流が“遅れている”のです。
以上、「無効電力のイメージ(コイルで無効電力が発生する仕組み)」についての説明でした。



