【基礎から学ぶ設計思想】 クロストークとは?漏話とは? ~隣接する線路間におけるノイズの伝播と使用周波数帯の影響~

電気電子
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回路設計を行う上で考慮すべき事柄は、使用環境・製品寿命・性能のバラつき・熱の影響・ノイズの影響など多岐に渡ります。
突き詰めていくと際限が無いので、本記事では設計時に意識しておくべきだと感じた内容についてわかりやすくまとめています。
考え方自体は回路設計以外にも通じるものがあるので、知っていて損をする内容ではないかと思いますよ?

今回は、クロストーク・漏話についての説明です。

1.初めに

テレビとゲーム機を接続する場合、映像・音楽・コントローラ入力の情報などをゲーム機とテレビの間で伝達するためのケーブルが数本用意されているはずです。
これらのケーブルは同じ装置同士を接続しているので、当然ながら辿る経路もほぼ等しくなります。

このように、あるケーブルの近くにまた別のケーブルが存在するという状況は頻繁に起こり得ます。
この状況ですが、電気について勉強しているとあまりよろしくない状態なのではないかということに気が付きます。

今回は、隣接する線路間におけるノイズの伝播の仕組みについての解説をしていこうと思います。

2.クロストークとは?漏話とは?

クロストークとは、複数の電気通信信号が混在してしまい、正確な情報を受信できなくなる現象のことです。
漏話とも呼ばれます。

ケーブルが2本平行に並んでいたり、プリント基板上の回路パターンが2本平行に並んでいたりする場合に発生し得る現象です。

通常、別々の2本の電線・回路パターンが存在したとして、それらを離して配置してあるのなら信号が混在することはあり得ません。
物理的に繋がっていないのだから当然です。
中央分離帯に木やフェンスを設けて完全に分離している道路で、中央分離帯を超えて事故を引き起こすようなものですからね。

なのですが、電気通信信号の場合、ある要因によってはそんな非常識が起こってクロストークが発生してしまうのです

クロストークの発生要因は、大きく分けて2つ存在します。
それは、電磁力コモンモードノイズです。

クロストークと電磁力の関係

本ブログでは電磁力関連の解説についてもまとめてあるのですが、以下の記事にて「導体(導線)に電流が流れると導線の周りに円形状の磁界が発生する」という説明をしています。

【基礎から学ぶコイル】 磁界と電流の関係 ~右ねじの法則とアンペアの周回路の法則~
私たちの身の周りには、回転運動をする装置が存在しますよね?パッと思い付くのは、換気扇や扇風機辺りでしょうか。これらの装置にはモータという機械が組み込まれていて、大体のモータは“電磁力”という力を発生させることによって駆動しています。本記事では、この電磁力を引き起こしている部品である“コイル”というものについて、基本からわかりやすくまとめていこうと思います。今回は磁界と電流の関係についてです。

この磁界というものは、程度は違えど存在する、導体に対して起電力・電流・応力などを発生させる力のことだと思ってください。

導体に電流が流れれば磁界が発生するということは、当然ながら電線・回路パターンに電気通信信号が流れた場合も円形状の磁界が発生します。
すると、平行して配置されているもう1つの電線・回路パターンに発生した磁界が少なからず干渉してしまいます
結果、想定していない電流がもう1つの電線・回路パターンに流れてしまい、それがノイズとなるのです
これが電磁力によるクロストークです。

原理をもう少し詳しく説明すると、電線・回路パターンはそれぞれコイルの役割をするので、コイル同士を隣り合わせて配置するとコイル同士で電磁結合している状態になります。
なので、相互インダクタンスが発生して、その分の影響が出るというわけです。
この辺りの原理は以下の記事辺りを参考にしていただくと良いかと思います。

【基礎から学ぶコイル】 自己インダクタンスと相互インダクタンス ~結合係数と合成インダクタンスの考え方~
私たちの身の周りには、回転運動をする装置が存在しますよね?パッと思い付くのは、換気扇や扇風機辺りでしょうか。これらの装置にはモータという機械が組み込まれていて、大体のモータは“電磁力”という力を発生させることによって駆動しています。本記事では、この電磁力を引き起こしている部品である“コイル”というものについて、基本からわかりやすくまとめていこうと思います。今回は自己インダクタンスと相互インダクタンスについてです。

読んでみてもよくわからない場合、「導体に電流が流れると磁界というものが発生し、その磁界の影響は距離が近い導体ほど大きくなる」と思ってくれれば良いです。

クロストークとコモンモードノイズ

こちらは以下のコモンモードノイズの説明記事の内容そのままです。

404 NOT FOUND | フラっとメモ!!
フラっと覗いて思い出すためのメモ帳

要約すると、電線・回路パターンが平行に並んでいるという状態はコンデンサのように電極板の間に絶縁体を挟んだ構造と一致するので、この疑似的なコンデンサ(浮遊容量という)を介してノイズ成分が循環してしまうのです
この循環するノイズ成分というのがクロストークに当たります。

3.通信業界におけるクロストーク

クロストークは複数の電気通信信号が混在してしまい、正確な情報を受信できなくなる現象のことだと述べました。
ですが、上述の電磁力及びコモンモードノイズによるクロストークは、電気信号にノイズがのってしまうから信号が乱れるという話でしかありません。
「正確な情報を受信できなくなる」という部分は合っているのですが、別に電気通信信号は混在していないんですよね。
これは、物理的な接続に関するクロストークの話だけをしたからです。

まあ、物理的な接続でも電気通信信号が混在することはなくないんですけどね。
電線・回路パターンの取り回しが悪いと起こり得ます。
昔のアナログ電話なんかは回線が結合して赤の他人の電話内容が漏れて聞こえたなんてこともあったらしいですし。
だから漏話とも呼ぶんです。
その名の通り、変な信号を拾って漏れて聞こえたんです。

クロストークは、物理的な繋がりだけではなく、無線通信のような繋がりにおいても発生する現象です
その場合、クロストークの原因は全く別物になります。

無線通信は、Wi-FiBluetoothなど様々な種類が存在します。
これらの通信は身の周りを飛び回っているわけですが、通信同士で邪魔し合わないことを不思議に思いませんでしたか?

工事現場で友人と雑談していたとすると、工事の音が大きくて会話なんてできたものじゃないでしょう?
音は電波通信と同じく“”という現象なので、電波に関しても他の信号に塗りつぶされたりしてもおかしくないんですよ。
実際、無線技術が誕生したばかりの頃は、目的としている信号以外の信号が混ざった状態で受信されてしまうなんてことがありました。
この現象が通信業界におけるクロストークなわけです。

無線通信は、使用周波数帯が被らないように棲み分けがされています。
詳しく説明すると長くなるので要約すると、「ある通信では○○Hz~△△Hzまでを使用するように」とあらかじめ定めてあるので、その周波数だけを取り出すことで目的の通信をできるようにしています
なのですが、使用周波数帯が近いものも存在するんですよね。
その為、関係無い電波だったとしても拾ってしまうことがあり、通信信号が混在することがあるわけです。

4.クロストークの対策

クロストークは、大きく分けると以下の2つの要因によって引き起こされていると言えます。

【要因】

①電線・回路パターンを並べて配置する。

②使用周波数帯域が近い通信をしている。

なので、それぞれ以下のような対策が有効です。

【対策】

①導体同士の距離をなるべく離す。
導体長をなるべく短くする。
ケーブルにシールド処理をする。

②使用周波数帯域が近い通信はなるべく使用しない。
使用する場合は、その通信線を離すなどの配慮をする。

基本的に当たり前の内容しかないのですが、試作段階ではその当たり前を実行するのを忘れていることって結構あるんですよね。

以上、クロストーク・漏話についての説明でした。