【基礎から学ぶ電気設備】 雷の発生メカニズム ~雲の発生原理とそこから雷が引き起こされる理由~

電気電子
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電車の駅や線路沿いなどには一般人立ち入ることのできない設備があります。
工場見学に行くと様々な機械かみ合って動いている様を見ることができます。
このように、よくよく考えると身の周りには電気設備が存在するのですが、どんなことをしているのかは第三者でしかないから曖昧だったりしますよね。
本記事では、そんな電気設備のあれこれを簡単まとめてみました。

今回は、「雷の発生メカニズム」についての説明です。

1.初めに

私たちの生活は、電気が非常に身近な存在になっています。
照明も、家電製品も、携帯端末も、全部電気で動きますからね。

それらの電気は人工的に作り出したものですが、自然現象の中にも電気は存在しますよね?
そう、です。

雷が落ちると周辺で停電を引き起こしたりするのは周知の事実ですが、「そもそも何で雷が発生するのか?」「何で停電するのか?」といった疑問を持ったことはありませんか?

ということで、今回は雷の発生メカニズムや雷サージと呼ばれる現象について解説していこう…と思ったのですが、雷の発生メカニズムの説明だけで結構な文字数になってしまったので、雷の影響に関しては次回の記事として分割してまとめることにします。
なので、今回は雷の発生メカニズムについてを解説していきます。

2.雲と雷の発生メカニズム

雷は雲が無ければ発生しないので、雲ができるメカニズムと併せて解説していきます。

ステップ①:上昇気流が発生する。

私たちの身の回りには、水が所々に存在します。
その辺の土は水を含んでいますし、海・川・池といった大きな水溜まりもあるでしょう?
これらに太陽光が当たることで、水が蒸発して水蒸気に気化します。

こうして発生した水蒸気は空気中に存在する塵を巻き込んで混ざった状態で上昇気流となり、空高く昇っていきます
上昇気流とは、その名の通り何らかの要因で地表付近にある空気が上空へ昇っていく現象のことです。

例えば、山に向かって風が吹いたとすると、山の斜面に沿ってどんどん上の方に風が昇っていくことになりますよね?
これも上昇気流です。

図1

ステップ②:雲ができる。

山に登ったことがある人なら知っていると思いますが、山は上に登れば登るほど寒くなります。
なので、登山する際は季節関係無く防寒具が必須になります。
なのにも関わらずショボい装備で登山して寒くて動けなくなってヘリコプターで救助される層が一定数おり、ニュースになったりするわけですが…。

さて、例を出したわけですけど、とにかく高所ほど寒くなるのが自然界のルールなんですよ。

ここで先程の話に戻るのですが、上昇気流となって高所に向かった水蒸気(in塵)も、当然ながら冷やされることになります。
すると、熱が奪われて水蒸気が水または氷に変化します。
この時、水蒸気は空気中の塵も一緒に巻き上げていたので、塵を媒体として小さな水や氷が集まっていきます
こうしてできる塵・水・氷の塊が雲の正体です。

この小さな雲がなおも上昇気流によって高所に移動するとなおさら冷やされることになり、雲の中の氷の粒もどんどん成長していきます。
そうして大きな雲が出来上がるわけです。

そして、上昇気流よりも重力の働きを強く受けるようになると、今度は自重に耐えられずに落ちてくるわけです
これが雨の正体です。
落下途中に温まって水に戻るので、液体の状態で降ってくるのです。

こんなメカニズムをしているので、当然ながら雨の中には媒体となった塵も含まれています。
なので、雨って塵だらけで汚いんですよね
子供の頃は雨が降っても構わずに外で遊んだりしてましたが、今思うと本気で止めて欲しかったものです…。

これで地表に水分が戻ってきますので、その水分に太陽が当たって水蒸気ができてまた雲が発生します。
こんなループが生まれているのが日本の環境です。
砂漠地帯で雨が降らないのは、そもそも雲を作るための水分が地表にないからなんですね。

ステップ③:雲の中で静電気が発生する。

さて、雲と雨の発生メカニズムについて解説したので、本題に入ります。

雲が出来て成長していくと、上昇気流を重力が上回って少しずつ下降していくことになります。
すると、雲の中にある氷の粒が擦れ合います。
この時に氷の粒の間で電子の移動が発生して帯電することとなり、静電気が発生します。
静電気の解説は以下の記事で行っているので、ここの説明を聞いて違和感を覚えた場合は内容を確認してみてください。

冬に金属製のドアノブを触った際にバチッとするあの現象を世間一般では静電気と呼んでいますが、実際はちょっと違うんですよ。

ステップ④:雷が発生する。

氷が擦れて静電気が発生すると、小さな粒は正の電荷、大きな粒は負の電荷を帯びます。
すると、大きな粒は重いので雲の中でも下の方に溜まり、逆に小さな粒は上昇気流の力で雲の中でも上の方に溜まるようになります。
この現象が雲内部の所々で発生した結果、雲の上の方が正の電荷を帯びて、雲の下の方が負の電荷を帯びるようになります

図2

そうして雲の中に電荷を蓄えていくと、ある地点で雲の中に電荷を留められなくなります。
通常なら絶縁体(電気を通しにくい性質を持つもの)である空気に覆われているので電気は発生しないのですが、大量の電荷が溜まって高エネルギーになると非常に大きな電圧が発生する為、空気の絶縁性が失われてしまうのです。

するとどうなるのかと言うと、雲の下部の負電荷が地面の正電荷に向けて放電を行います
この現象が雷、一般的に言うところの落雷です。

図3

一方、雲の下部の負電荷が雲の上部の正電荷に向けて放電することもあり、その場合は雲放電と呼ばれます。

以上が雷の発生メカニズムです。

もっと詳しく説明すると、本当は地表から雲に向けてリターンストローク(帰還雷撃)というものが発生していて、私たちが見ている雷はこれだったりします。
ただ、大体の原理を知るのならここで説明したステップ①~④のような認識で充分です。
気になる方は別途調べてみてください。

3.雷に関するその他の豆知識

雷に関する豆知識もついでに記載しておこうと思います。

①雷の音について

雷と言えばゴロゴロバリバリという音が印象的ですよね。
あの音の正体は、雷によって空気が突然熱されることで膨張する際に引き起こされるものです。

『空気が熱されるだけで音が発生するものなの?』と思うかもしれませんが、雷が通過することで空気は瞬間的に数万℃にまで達すると言われています。
太陽表面で約6,000℃と言われているので、どれだけ異常な値なのかがわかりますね。

そんな現象が雷以外に身の周りには存在しないので、あまりイメージが湧きづらいかと思います。

ちょっと違いますけど、ヤカンでお湯を沸かす際に、水が沸騰すると甲高い音がなるようになりますよね?
あんな感じで、熱による圧力の増加は空気に伝わり、耳で捉えられるようになっているのです。

②雷の落ちる場所と避雷針

雷は高いところに落ちるから、ゴロゴロと音が鳴っていたら木には近づかないようにと教えられませんでしたか?
実際、雷は高いところに落ちやすいという性質を持っています。
あくまでも“落ちやすい”であって必ず落ちるわけではないですけどね。

この特性を活かした雷への対策として、避雷針が存在します。

避雷針は、その名の通り雷を避けるための針です。

落雷が発生した際、高所に設置された避雷針に向けて優先的に雷が落ちます。
この時、避雷針は電流を地面に逃がすために地中の奥深くまで導線が延ばされていますので、落雷による電流は地面に逃がされるようになります
日本においては、20mを超える建物には避雷針もしくは避雷針の代わりになるものを設置することを法律で定めてあるので、実はその辺にいっぱい避雷針は存在することになります。

こうして雷に対する保護をしてはいるのですが、先程も述べたようにあくまで避雷針に“優先的”に落雷するので、別の場所に落ちることもあります。
何事も絶対は無いんですよ。

以上、「雷の発生メカニズム」についての説明でした。