【基礎から学ぶ基板】 プリント基板設計 ~回路設計と基板設計(アートワーク設計)の違いとは?~

電気電子
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私たちの身の周りには、電気で動く製品が多々存在します。
そんな製品の機能は、内部に組み込まれている“プリント基板”というものによって決められています。
今回は、そんなプリント基板についての知識を、1から調べ直してわかりやすくまとめてみました。

今回は、「回路設計と基板設計(アートワーク設計)の違い」についての説明です。

1.初めに

基板を設計しようと考えた場合、大きく分けて2つの設計が必要になります。
それは、回路設計基板設計です。

言い慣れている・聞き慣れている人は、どちらがどんな設計内容なのかは当然ながら把握しています。
ですが、回路設計はまだしも、基板設計と言われても一体何を指しているのかよくわからなかったという人も居ると思うんですよね。
回路設計のことを基板設計と呼んでいる可能性とかもありそうでしょう?

今回は、そんな回路設計と基板設計が指す内容についてまとめてみました。

2.回路設計とは?

回路設計とは、その名の通りプリント基板の回路を設計することを指しています。

抵抗の定数は○○Ωを使用して、ICは××を使用して、△△と□□を繋いで…と言った『どの部品をどのように使用するか?』という根本的な回路の構成について考えるのです。
その為、何かしらの回路図CADを使用できなければなりません。

私の場合、AutoCAD・図脳rapid・CR8000といった回路図CADを使用したことがあります。
似ているようで正反対の操作性だったりすることがあるので、併用すると地味に混乱するんですよね。
まあ、複数の会社を跨いだりでもしない限りはほぼ一つのCADしか使わないでしょうけど…。

プリント基板にどんな回路を構成したいのかを考えるのが回路設計なので、回路設計では回路図・部品表・ネットリスト(回路図CADにおいて部品の端子間の接続情報を記載したテキストデータのこと)を作成することを目的としています
回路図・部品表・ネットリストを作成すると言っても、回路図設計をすると勝手に部品表とネットリストもできるんですけどね。

3.基板設計とは?アートワーク設計とは?AW設計とは?

上記の説明でわかったと思うのですが、回路設計は言うなれば机上理論の段階です。
ある製品を作りたいので、その機能を実装するためにはどんな回路が必要になるのかを考えたのです。

では、次にその理論を形にする必要がありますよね?
それが基板設計なのです。
要するに、回路設計は基板設計をするための前準備なんですね。

基板設計とは、回路設計データを基にプリント基板のパターンの引き回し・部品配置・基板外形など、プリント基板を実際に製作するために必要なデータを設計することです。

基板設計は、アートワーク設計とも呼ばれます。
アートワーク[artwork]は芸術作品という意味です。
確かに、初めてプリント基板を見た時は謎の部品がびっしりと配置されていて、非日常感というか異物感というか、一種の芸術性は伝わってきたものです。
言い得て妙ですね。

また、アートワーク設計を略してAW設計と呼んでいる場合もあります。

私は回路設計者なのですが、初めて基板設計を依頼した際に「AW設計を始めます」とメールを返信されて困惑したことがあります。
インターネットでAW設計と調べるとアートワーク設計が上位の検索結果として出てくるのですが、明確にAW設計と記述しているページがほとんど無いんですよね。
メールの文面からもアートワーク設計という認識で良さそうだったのですが、知ってて当然のように言われると質問しづらいのがなんとも…。

ついでに言うと、基板設計のことをパターン設計と呼んでいる方もいます。
ただ、後述しますが、基板設計にはパターン配線以外の業務も含まれますので、厳密には正しくないと思われます。
意図は伝わりますけどね。

基板設計の最終的なゴールは、基板製作のために必要なデータであるガーバーデータを作ることです。

ガーバーデータは、パッドランドなどの部品配置情報・層数情報・層ごとのパターン配置情報・レジスト図・シルク情報・基板外形図・ドリル位置・ドリル径といったデータで構成されています。
要するに、プリント基板をどのようにデザインするのかという詳細なデータを、一纏めにしてガーバーデータと呼んでいます。

このガーバーデータをP板.comのようなプリント基板製造会社にプリント基板製造依頼を出すときに一緒に渡します。
すると、ガーバーデータを基にしてプリント基板が製造されるというわけです。

ちなみに、回路設計者が基板設計を依頼したとすると、回路設計者が主に確認することになるのはパターン配線・部品配置・シルク表示などを確認できる基板図になります。
基板図はBoard ViewewのようなCADを用いて確認し、見た目は以下のように何かとカラフルになっています。

図1

この図の場合、部品を配置するためのパッドが以下の黄色丸部になります。

図2

そして、部品の配置は以下のようになっています。

図3

▲1がコネクタの1pinを表しているので、コネクタの2pinが一番下の抵抗、3pinが真ん中の抵抗、4pinが一番上の抵抗に繋がっていることがわかります。

図4

そこかしこにある○はビア(プリント基板の各層にあるパターン間を接続するための小さな穴のこと)なので、このビアを通じて違う層にパターンが繋がっていたりします。
この図の場合はB面の層レイアウトを見ているので、他の層を表示するとビアからまた別のパターンが延びていたりするんですね。

そして、全体的に青縦線で覆われている部分はGNDのベタ塗りを表しています。
GNDベタパターンというヤツです。

これらの情報は対象にカーソルを合わせたりクリックすれば詳細が表示されるようになっているので、初見だとしても何となく理解できるようになっています。

4.まとめ

製品に使用するプリント基板を製作するためには、まずは回路設計でどんな回路を形成したいのかを形にします。

次に、回路設計データを基に基板設計(アートワーク設計)を行い、基板を製作するためのデータを作ります。

後は、この基板設計データを使って実際にプリント基板を形にするというわけです。

ちなみに、回路設計・基板設計・基板製作を全て一社で行っていることは稀で、回路設計だけ自社で実施して後は外注/回路設計と基板設計を自社で実施して基板製作は外注としている会社が多いです。
回路設計と基板設計は設計業務だから設計ソフトがあれば良いですが、基板製作は専用の設備が必要になりますからね。

以上、「回路設計と基板設計(アートワーク設計)の違い」についての説明でした。