今回は「株式投資をする際に確認する指標④(営業CF・投資CF・財務CF・現金及び現金同等物残高の解説)」についてです。
1.初めに
いざ株式投資を始めてみようと思ったとして、どこの株式を売買するのかは自分で考えて決定する必要があります。
取引をするための指標として企業の情報が各証券口座のページで閲覧できるようになっているのですが、初見だと見たことのない用語・略語がこれでもかと載っていて、一体何が書かれているのか困惑することでしょう。
今回は、そんな株式投資をする際に確認することになる指標の内、キャッシュフロー(営業CF・投資CF・財務CF・現金同等物残高)について解説してきます。
2.キャッシュフローとは?
そもそもキャッシュフローとは何なのかという部分を軽く補足しておきます。
キャッシュフローとは、その名の通り、会社における資金(Cash/キャッシュ)の流れ(Flow/フロー)のことです。
例えば、他の指標を確認してみたところ、A会社は利益は出しているはずなのに、資金が全く残っていない状態になっていたとします。
では、A社の利益はどこに行ってしまったのでしょうか?
そこを知るための足がかりになるのがキャッシュフローです。
お金の流れがわかるんですからね。
そんなキャッシュフローを分類して営業CFとか投資CFという項目が存在するというわけです。
※基本的に、長いからかキャッシュフローはCF[Cash Flow]と略されています。
3.営業CFとは?
営業CFとは、会社の本業でどれだけ現金(利益)を生み出したかを示す指標です。
企業の中心となる事業(商品売買やサービスの提供)で、実際に現金がどれだけ増えたかを表しているということです。
計算式で表すと、「営業CF=本業で入ってきた現金-本業で出ていった現金」といったところです。
つまり、営業CFからは、シンプルに会社の本業が順調かどうかが見て取れます。
営業CFがプラスなら、本業は順調で借金返済や投資に回せる余裕があることになります。
反面、営業CFがマイナスなら、本業がうまく回っておらず現金不足に陥っていることがわかります。
売り上げ不振や、売り上げは上がっていても現金は回収できていないという状態です。
なので、基本的には営業CFはプラスであることが前提となっています。
ただし、営業CFがマイナスになっていても必ずしもそれが悪いものとは限りません。
例えば、以下のような理由で営業CFが一時的にマイナスになっていることがあります。
- 売り上げが伸びてきているけど現金が入ってくるまでタイムラグがある現金が回収できていない状態にある。
- クリスマス商戦に向けて需要の増加に備えた在庫の積み増しをしている。
- 成長のために人件費や広告費に先行投資している。
こんな理由もあり得るので、成長企業の場合は営業CFがマイナスになっていることは割とあります。
ただし、売り上げが減っているのに営業CFもマイナスになっていたり、継続して営業CFがマイナスになっている場合は、普通に事業がうまく回っていないだけの可能性があります。
特別な場合を除いて営業CFはプラスであるべきという理解でOKです。
4.投資CFとは?
投資CFとは、会社が将来の成長のための投資活動にどれだけお金を使ったのかを表す指標です。
設備投資(工場建設や工作機械購入など)・企業買収・事業拡大などの未来を見据えた投資をどの程度しているのか、それらの投資からどの程度現金を回収しているのかを知ることができます。
計算式で表すと、「投資CF=投資に使った現金-資産売却で得た現金」といったところです。
投資CFからは、営業CFのようにプラスだから良い・マイナスだから悪いというシンプルな判断はできません。
割と複雑です。
投資CFは将来に向けて投資をすればするだけマイナスになるので、それは会社の成長のための先行投資を行っているに過ぎません。
投資が実を結んで業績が良くなるかもしれませんからね。
反面、投資が失敗してしまうと回収し切れず、単純にマイナスになります。
あくまで、投資に積極的かどうかしか判断できないんですよ。
寧ろ、投資CFに関してはマイナスになっている会社の方が多いくらいです。
また、投資CFは設備や株式などの資産を売却をするとプラスになります。
つまり、投資CFがプラスなら、投資に非積極的であったり、資産を売却して現金を作る何らかの理由があったということになります。
資産売却の理由が不採算事業の売却や不要資産の整理であったならプラスになっていることは良いことなのですが、単純に投資を控えているだけなら成長があまり見込めない会社ということになります。
このように、投資CFは何故プラス/マイナスになっているのかという理由によって良い/悪いの判定も覆ってしまうのです。
なので、大まかには他のキャッシュフローの情報と照らし合わせて判断すると良いです。
例えば、営業CFがプラスで投資CFがマイナスになっていた場合、事業が順調だから積極的に投資しているということになるので、基本的には良好です。
営業CFも投資CFも両方マイナスになっていた場合、利益を出せていないのに積極的に投資をしているということになるので、何とか事業を良い方向に転換させるために投資している可能性があります。
もしこれで純利益もマイナスが継続していたりすると、投資が失敗したら上場廃止や倒産も見えてきてしまいます。
こんな感じに組み合わせれば、大まかな予想はできるというわけです。
5.財務CFとは?
財務CFとは、会社がどの程度資金を調達して、どの程度返済をしているのかを表す指標です。
会社は、銀行からの借入や株式の発行により資金を調達します。
それらの調達した資金に対し、借金返済・株主への配当・自社株買いなどをすることで返済をします。
このような財務状況を表しているのが財務CFです。
財務CFの上下に関わってくる要素をいくつか紹介します。
銀行に対してお金を借りた場合、現金が増えます。
なので、財務CFはプラスになります。
逆に、銀行に対して借りたお金を返した場合は、現金が減ります。
なので、財務CFはマイナスになります。
ちょっとややこしいですが、お金の貸し借りをして、会社の手元に現金が増えれば財務CFはプラスになるのです。
株式を新たに発行した場合、資金が集まるようになるので現金は増えることになります。
なので、財務CFはプラスになります。
反面、株主に対して配当金を支払うと会社の現金が減るので、財務CFはマイナスになります。
また、自社株買いをした場合、会社が自分の株を買い戻すことになるため現金が減ります。
なので、財務CFはマイナスになります。
上記のような要素の総計がどうなっているのかが財務CFから見て取れるというわけです。
財務CFがプラスになっていると資金を集めている状態なので、借入を増やしたり増資していることがわかります。
資金を増やしている目的が成長のためならポジティブな理由になるのですが、経営が苦しく資金繰りに困った末の借金だったりした場合はネガティブな理由になります。
毎年のように財務CFがプラスになっている場合は延々と借金し続けていることになる為、急成長中の会社でもない限り注意が必要です。
財務CFがマイナスになっていると、借金を返済したり、配当金を支払ったり、自社株買いを積極的にしていることになります。
なので、財務CFに関しては基本的にはマイナスになっている方が健全と言えます。
まあ、経営難なのに金融機関から返済を催促されてマイナスになっている可能性もあるのですけどね…。
6.現金及び現金同等物残高とは?
CF(キャッシュフロー)と名に付く項目は上記の3つなのですが、そこに並ぶように「現金及び現金同等物残高」という項目も存在します。
SBI証券の場合は「現金等」とだけ書かれています。
現金同等物残高とは、会社がすぐに使うことが可能なほぼ現金と同じ価値のある資産の合計額のことです。
具体的には、容易に換金可能且つ価値の変動についてほとんどリスクの無い短期投資が現金同等物残高になります。
例えば、銀行の普通預金はすぐに引き出し可能なので現金同等物残高に当たります。
定期預金も3ヵ月以内に満期になるものは現金同等物残高扱いになります。
他には、すぐ換金可能な短期国債、短期の企業向け債権なんかも含まれます。
すぐに売って現金化可能なものは軒並み現金同等物残高扱いなのです。
現金及び現金同等物残高があるということは、会社が今すぐ自由に使えるお金があるということです。
つまり、借金返済・投資・配当なんかにも使えるわけです。
その為、会社の体力・安全性といった面を判断することができます。
そして、この現金及び現金同等物残高なのですが、営業CFと投資CFと財務CFの総計と一致するようになっています。
つまり、会社のお金がどのように動いたのかが3つのCFが表すもので、最終的にいくら残ったかを表しているのが現金及び現金同等物残高になっているというわけです。
そんな関係になっているので、前期に比べて現金及び現金同等物残高がプラスになっていれば経営は順調だと言えます。
ちなみに、証券会社の情報で営業CF+投資CF+財務CFを計算すると、現金及び現金同等物残高と一致しません。
さっきの説明と矛盾しているように感じるかもですが、営業CF+投資CF+財務CFで計算されるのはあくまでその期の増減額です。
証券会社の場合は期首残高(会計期間/1年間のスタート時点で会社が持っていた現金及び現金同等物残高)にこの増減額を足し合わせたものになっていることが多いです。
どちらにしろプラスであった方が良い項目なので、そこまで困りませんけどね。
7.キャッシュフローからの判断例
キャッシュフローに関わる4項目の解説をしたので、まとめとしてキャッシュフローから判断する例を挙げていきます。
あくまでその可能性が高いという話であって、ここまで解説してきたように例外も存在するということは念頭に置いてください。
理想的なキャッシュフローです。
まず、営業利益がプラスなので事業でちゃんと利益が出ていることがわかります。
投資CFと財務CFはマイナスなので、投資に積極的且つ借金の返済もしています。
その上で現金及び現金同等物残高がプラスなので、営業利益を使って投資と借金返済をしても現金はある程度手元に残しているとわかります。
健全でしょう?
最悪なキャッシュフローです。
まず、営業CFがマイナスなので事業が上手くいっていません。
事業が上手くいっていなので資産を売却して現金を作り、投資CFがプラスになっています。
勿論、投資CFがプラスなので、成長投資にお金を回せていません。
財務CFがプラスなので、借金返済どころか寧ろ借金が増えています。
その上で現金及び現金同等物残高がマイナスになっているので、資産を売ったり借金をしてお金を確保しても、本業の赤字を賄えていないということになります。
一時的にこの状態に陥る特別な理由がない限り、経営が危険な状態になっていると読み取れます。
投資CFがせめてマイナスなら希望はあるのですが、素でこのキャッシュフローになっていたら倒産や上場廃止が見えてきます。
上記のように大まかなキャッシュフロー情報を読み取ることができます。
ここで挙げたのは両極端な例でしたが、良いところもあれば悪いところもあるキャッシュフローになっている会社は多くあるので、他の指標と合わせて確認するのが大事です。
以上、「株式投資をする際に確認する指標④(営業CF・投資CF・財務CF・現金及び現金同等物残高の解説)」についてでした。






