今回は、「VCCI規格」について記述していきます。
1.規格と法律の違い
本題に入る前に規格と法律について補足説明します。
まずは規格からです。
単純に“規格”と検索すると、“製品・製品寸法・材料・工程などに対して定義した基準”というニュアンスの説明が出てきます。
イマイチわかりづらい説明ですよね。
なので、何かを作る際のベースとなるものを規格と捉えてください。
例えば、ある会社がお饅頭を作って売ろうとしているとします。
その際、量産をするためにA工場とB工場で製作をすることにしました。
売ろうとしているお饅頭には当然種類がありますので、その種類ごとに同じ原材料・サイズ・量でないといけません。
大きさや形がバラバラだと生産コストと売値のバランスが崩れてしまいますからね。
なので、『この材料を使って、この金型で、この分量で、このような工程で製作してください』という指示が必要です。
この指示が規格というイメージです。
こうして規格を定めておけば、A工場とB工場のように製作場所が変わったとしても出来上がる製品は全く同じものになります。
ちなみに、長さを表すための「m:メートル」という単位や重さを表すための「kg:キログラム」という単位なんかも規格です。
ああして基準を定めているから”大体これぐらい”という想像を私達はできるのです。
次は法律についてです。
規格の説明をしたので何となく規格と法律では何が違うのか想像ができるのではないでしょうか?
規格は標準・基準を表すものでした。
規格は遵守した方が何かと良いですが、必ずしも規格に則る必要はありません。
あくまで任意です。
その点、法律は守らないと罰則があります。
ここが大きな違いです。
そんな規格と法律…つまり決まり事について調べてまとめたのが本記事となります。
内容はそこそこ知れる程度のレベルに抑えています。
専門的過ぎると情報過多で意味わからなくなるので。
2.VCCI規格とは?
VCCI規格の“VCCI”とは、[Voluntary Control Council for Interference by information technology Equipment(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)]の略称です。
VCCIという協会の制定した規格だからVCCI規格なんですね。
また、VCCIは日本の団体組織になります。
その為、その名称からわかるように、VCCIはマルチメディア機器(コンピュータ・パソコン・その周辺機器・オーディオ機器などのこと)のような情報技術装置の電波障害に関する自主規制を行っています。
要するに、VCCI規格とは、情報技術装置のEMI(電波放射)について自主規制するための規格のことなのです。
ちなみに、マルチメディア機器のことはMME[MultiMedia Equipment]と略されていることが多いです。
VCCIについて調べると高確率で登場する用語なので、ついでに覚えておきましょう。
3.VCCI規格が誕生した経緯
昭和の時代では白黒テレビが画期的だったのに、今となってはガラケーさえ過去の産物で、誰も彼もスマートフォンを持っているのが当たり前になっていますよね。
一度情報通信機器が普及し始めてから、情報通信技術はこの短い年月で異様なほど発展しているんです。
そうなると、それだけ身の周りに色んな周波数帯の電波を放射する機器が増えるわけで、電波を受信する側の機器にとってノイズとなる電波が多くなってしまうんですよね。
その結果、ラジオに雑音が混じったりするようになり、機器からの電波放射が問題視されるようになりました。
具体的な動きとしては、1979年からIEC(国際電気標準会議)とCISPR(国際無線障害特別委員会)の間で審議が行われ、1985年9月に「情報処理装置および電子事務用機器等から発生する妨害波の許容値と測定法」について勧告されました。
要するに、機器から放射される電波の測定方法や許容値の国際的なルールが決められたんです。
そこで、日本もこの勧告に倣って自主規制していこうという流れになり、1985年12月にJEIDA(日本電子工業振興協会)・JBMA(日本事務機器工業会)・EIAJ(日本電子機械工業会)・CIAJ(通信機械工業会)の関係業界4団体が協力してある団体を設立しました。
それがVCCIというわけです。
4.VCCI規格の基準
電波放射について審議していた国際的な団体がIECとCISPRでした。
このCISPRとは、電気機器・電子機器から放射される電磁波(ノイズ)についての測定方法や許容値を定めている国際的な機関のことです。
なんかVCCIと似てますよね?
実際、VCCIはCISPRを技術基準としています。
国際的なルールであるCISPRを日本国内向けに落とし込んだのがVCCIなので、基準は大体CISPRになっているんですよ。
その為、試験規格にVCCI-CISPRとか書かれていたら、「VCCIに則る。※ただし、この内容はCISPRを基準としている。」程度に捉えておきましょう。
5.対象機器の定義
MMEがVCCI規格の自主規制対象になると述べましたが、厳密には以下のように定義されています。(「自主規制措置の適用範囲」を引用)
MMEとは情報技術装置(ITE)、オーディオ機器、ビデオ機器、放送受信機、娯楽用照明制御装置又はこれらの組合せです。MMEによって行われる動作は、例えば、単一のメディア又はマルチメディアのコンテンツの表示、記録、処理、制御、伝送又は受信することなどに関連します。コンテンツは、個別のデータ、オーディオ、ビデオ又はそれらの組み合わせもあります。MMEは、2つ以上の主機能を持っていることがあり、例えば、基本的なテレビジョン受信機の主機能には、放送受信、オーディオ再生、及び表示を含んでいます。
引用元:自主規制の流れ、内容、適用範囲 | 一般財団法人 VCCI協会
通信機器全般が対象で、一部例外があるということですね。
また、MMEはクラスAマルチメディア機器とクラスBマルチメディア機器に分類されます。
クラスBマルチメディア機器以外の全ての機器。
クラスAマルチメディア機器向けの許容値が設定されている。
住宅環境での仕様を目的とした機器。
クラスBマルチメディア機器向けの許容値が設定されている。
6.VCCIの適合までの大まかな流れ
VCCI規格は自主規制するための規格ですが、実際は自分で試験して自分で宣言して終わりというわけではありません。
VCCIに申請したりする必要があります。
なので、簡単な適合までの流れを記述していきますね。
①会員登録する。
VCCIと取り交わしをするために、まずは会員登録をします。
VCCIって有料の会員制団体なんですよ。
この会費が運営資金になっています。
登録申請をしたらVCCIで審査が行われ、問題無ければ登録証が進呈されます。
②適合試験を実施する。
適合試験を実施するわけですが、どこでやっても良いというわけではありません。
VCCIに登録された設備にて試験を行う必要があります。
試験後はVCCIに届出を行い、届出が受理されるのを待ちます。
③製品を出荷する。
届出が受理されたら、製品と取扱説明書に所定の表示(VCCIマークや注意文言など)を実施し、市場に出荷します。
これでVCCI会員側がやることは終わりです。
ちなみに、注意文言はクラスAの場合は必要ですが、クラスBの場合は不要です。
クラスA以外がクラスBなので、文言が無ければ自ずとクラスBであることがわかりますからね。
④市場出荷品に対してVCCIが判定を行う。
製品を出荷したら、その出荷された製品に対してVCCIが試験を実施します。
実際に売りに出した製品に対して適合試験を行い、その判定結果がVCCI会員にフィードバックされます。
出荷前の製品に対して適合試験を実施するのではなく、出荷後の製品から選んで適合試験を実施するという形態が珍しいですよね。
このように、最終的にはVCCIの判定も受けるわけですが、製品出荷時点では自分で試験を行い、自分で問題無いことを宣言することになります。
以上、「VCCI規格」についてでした。