【基礎から学ぶ規格と法律】 REACH規則とは? ~EUの製品に含んでいる化学物質を登録・開示できるようにする決まり事~

ルール
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世の中には様々なルールがあります。
規則・規定・規格・法律…呼び方は多々ありますね。
そんなルールの中には聞いたことはあるけど内容まではちゃんと理解していないものがあるのではないでしょうか?
ただ、そこで調べてみたとしても、規格や法律の原文やその引用ばかりが出てきて、言い回しが難しくてイマイチわからないことが多いです。
本記事ではそんなモヤモヤを解決できるよう、噛み砕いてわかりやすく記述していけたらと思います。

今回は、REACH規則について記述していきます。

1.規格と法律の違い

本題に入る前に規格と法律について補足説明します。

まずは規格からです。

単純に“規格”と検索すると、“製品・製品寸法・材料・工程などに対して定義した基準”というニュアンスの説明が出てきます。
イマイチわかりづらい説明ですよね。
なので、何かを作る際のベースとなるものを規格と捉えてください

例えば、ある会社がお饅頭を作って売ろうとしているとします。
その際、量産をするためにA工場とB工場で製作をすることにしました。
売ろうとしているお饅頭には当然種類がありますので、その種類ごとに同じ原材料・サイズ・量でないといけません。
大きさや形がバラバラだと生産コストと売値のバランスが崩れてしまいますからね。
なので、『この材料を使って、この金型で、この分量で、このような工程で製作してください』という指示が必要です
この指示が規格というイメージです
こうして規格を定めておけば、A工場とB工場のように製作場所が変わったとしても出来上がる製品は全く同じものになります。

ちなみに、長さを表すための「m:メートル」という単位や重さを表すための「kg:キログラム」という単位なんかも規格です。
ああして基準を定めているから”大体これぐらい”という想像を私達はできるのです。

次は法律についてです。

規格の説明をしたので何となく規格と法律では何が違うのか想像ができるのではないでしょうか?
規格は標準・基準を表すものでした
規格は遵守した方が何かと良いですが、必ずしも規格に則る必要はありません。
あくまで任意です。

その点、法律は守らないと罰則があります。
ここが大きな違いです。

そんな規格と法律…つまり決まり事について調べてまとめたのが本記事となります。
内容はそこそこ知れる程度のレベルに抑えています。
専門的過ぎると情報過多で意味わからなくなるので。

2.REACH規則とは?

REACH規則の正式名称は、[Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals]です。
読み方はリーチです。

[Registration]が[登録]、[Evaluation]が[評価]、[Authorization]が[承認]、[Restriction]が[制限]、[Chemicals]が[化学薬品]という意味です。
つまり、[化学薬品の登録・評価・承認及び制限]についての規則を指しています。
簡単に言えば、『この製品にはこれらの化学物質がこれくらい含まれていますよ』という情報開示要求をする決まり事がREACH規則です。

情報を管理する必要のある化学物質は「使用量によっては有害性が懸念される化学物質」である為、管理対象となる候補物質は数千・数万にも上ります。
その中から現状としては十数物質の情報管理をするように定めていますが、短期間のうちに15物質から38物質まで増えるという前例があったようなので、今後はもっと増えていく可能性があります。

REACH規則は、2007年に施行されたEUの規則です。
同じ化学物質に関する決まり事としてRoHS指令とWEEE指令という決まり事が2003年に制定されています。
それぞれを要約すると以下のようになります。

RoHS指令

電気・電子機器に含む有害物質の使用制限に関する決まり事。

WEEE指令

電気・電子機器の廃棄処分・リサイクルに関する決まり事。

REACH規則

製品に含んでいる化学物質を登録・開示できるようにする決まり事。

REACH規則の目的をまとめると、以下の3点となります。

  • 人の健康と環境の保護
  • EU内での化学物質の自由な流通
  • EU内での化学産業の競争力の維持向上及び革新の強化

これを見てわかる通り、REACH規則はあくまで化学物質の情報管理について定めた規則なので、これ単体ではこれらの目的は達成できません。
RoHS指令・WEEE指令・REACH規則を全部守ることで初めて意味を成します。

3.REACH規則施行による変化

REACH規則が施行されることで大きく変化した点がいくつかあります。

  • 本来政府が実施していた化学物質に対するリスク評価を事業者が行うように義務付けられた。
  • 既存化学物質に関しても事業者ごとに情報管理するように義務付け、新規化学物質と既存化学物質の従来の枠組みを撤回して全く同じ扱いにした。
  • サプライチェーン(製造から販売までの流れ)における化学物質の情報共有を義務付けた。
  • 成形品に含有される化学物質の有無や用途に関する情報の把握も要求されるようになった。

4.REACH規則のポイント

最初に述べた通り、REACH規則は登録・評価・認可(承認)・制限についての規則です。
この4つのポイントを要約すると以下のようになります。

登録

年間1t以上製造・輸入する際に、新規化学物質・既存化学物質に関わらず事業所ごとに情報を登録をする。

評価

事業所が登録した情報を欧州化学品庁が評価する。
必要に応じて追加情報の提出を事業者に要求される。

認可

人や環境に対して有害性が懸念される物質である認可対象候補物質の中から実際に規制する認可対象物質を選定する。
また、認可対象物質は原則販売禁止で、使用するには特定された用途ごとに認可を得る必要がある。

制限

人や環境に対して許容できないリスクがある場合、製造・販売・使用を制限します。

5.SVHC(高懸念物質)と認可対象物質

REACH規則では、管理対象となる候補物質(数千・数万にも上る)の中から、十数物質の情報管理をするように定めていると述べました。
言い換えると、管理対象・認可対象物質にまではなっていないけど、“有害だと考えられている物質リスト”に載っている物質は無数にあるんですよ。
このリストのことをSVHC[Substances of Very High Concern]、高懸念物質と呼びます。
認可対象物質の候補リストという意味で、Candidate List(候補リスト)と呼ばれていることもあります。
SVHCは一般公開されていますので、調べれば閲覧可能です。
このSVHCの中から認可対象物質となったものが十数物質に及んでいるのです。

認可対象物質の選定は、以下のような3段階の手順で行われます。

  1. SVHCの候補物質を決める。
  2. ①の候補物質の中から認可候補物質を決める。
  3. ②の認可候補物質の中から認可対象物質を決める。

要するに、有害だと考えられる物質の中でも優先順位を設けて、特に有害だと考えられる物質についてより厳しく管理するような体制を整えているのです
物事に優先順位を付けて、重要なものから対処してく…よくあることですよね。

ただ、ここで厄介なことがあります。
①の候補物質と②の認可候補物質、日本ではこのどちらもSVHCと呼んでいることがあります
なので、SVHCと言われたら、“有害だと考えられている物質リスト”なのか、“有害だと考えられている物質の中から重要性が高めに設定された物質リスト”なのか、どちらを指しているのかは文脈から察する必要があるんです。
面倒ですけど何故かそうなってしまっているので、注意しましょう。

ちなみに、SVHCに該当する時点で、一定の法的義務が発生します。
具体的には、以下の2つの義務が発生します。

  1. SVHC該当物質を0.1%以上を含有する且つ年間の取り扱い量が1tを超える場合、ECHA(欧州化学品庁)への届出が必要。
  2. SVHC該当物質を0.1%以上を含有する場合、製品に物質名を記載するなど、製品を安全に使用するための情報の伝達が必要。

要するに、『認可対象物質ではなくとも有害だと考えられる物質ではあるから、製品に含まれているなら最低限の情報開示はしろよ』というわけです。
なので、製品をEU向けに生産する場合は、SVHCに含まれる物質の調査は必須になると覚えておきましょう。

以上、REACH規則についてでした。