【基礎から学ぶ基板】 ツーリングホールとは? ~プリント基板の位置決め用の穴~

電気電子
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

私たちの身の周りには、電気で動く製品が多々存在します。
そんな製品の機能は、内部に組み込まれている“プリント基板”というものによって決められています。
今回は、そんなプリント基板についての知識を、1から調べ直してわかりやすくまとめてみました。

今回は、「ツーリングホール」についての説明です。

1.初めに

本ブログでは、プリント基板に関わる初歩的な用語・基板製造工程で出てくる用語・基板層構成の関連用語など、様々な用語についてまとめてあります。

これだけでも結構な種類の用語があるのですが、少し踏み込むと追加で知らない用語が出てくることは基板用語に関わらずよくあります。

今回は、基板設計を外注していたりする方はあまり耳にすることの無い単語であろう“ツーリングホール”について解説していきます。

2.ツーリングホールとは?

ツーリングホールとは、プリント基板の位置決めをするための基準穴のことです。

位置決めと言っても用途は様々で、基本的なところだとDIP部品表面実装部品を自動で実装する際のプリント基板の位置決めに用いられています
会社にもよるでしょうが、プリント基板単体の状態での検査時の位置決めに使用している場合もあります。

部品を自動で実装する場合、「特定の位置座標に部品Aをこの向きで実装する。」という具合に決められたプログラム通りに機械が動く必要があります。
では、プリント基板の設置が正常な位置から右に2mmズレていたとします。
この状態で部品を実装しようとすると、本来部品を実装したい位置の左2mm地点に部品を実装しようとしてしまいます。
プリント基板に実装している部品なんて2mm以下の小さな部品もあるくらいなので、2mmズレたら隣のパッドに部品を載せられたりと実装が碌に上手くいかないことは想像できるかと思います。
なので、少しのズレも許容できないんですよね。

ではどうするかと言うと、プリント基板を毎回同じ位置にセットできるようにしっかりとした基準を用意しておこうというお話になるわけです。
そこで登場するのがツーリングホールです。

3.ツーリングホールの設け方

実際にツーリングホールはどのように設けられているのかを説明していきます。

ツーリングホールは、基板端…というか四隅方向に用意されます。
イメージとしては以下のようになります。

図1

左下と右下に何か小さな穴がありますね。
これがツーリングホールです。

ツーリングホールは最低2箇所に用意され、それぞれ微妙に形状が異なります。

では、ツーリングホールの位置関係と形状について詳しく見ていきましょう。

まずは向かって左下側のツーリングホールですが、拡大すると以下のようになっています。

図2

基板の下隅から5mm・左隅から5mmの位置に直径4mmの円形のツーリングホールが設けられています。
こちらのツーリングホールは基準穴と呼ばれていることがあります。

対して、向かって右下側のツーリングホールは、以下のようになっています。

図3

基板の下隅からの距離は規定されておらず、右隅から5mmの位置に縦幅4mm・横幅5mmの横長の円形のツーリングホールが設けられています。
下隅からの距離は規定されていませんが、基準穴同様に5mmになっていることが多いです。
こちらの横長のツーリングホールは副基準穴と呼ばれていることがあります。

副基準穴が若干横長になっている理由は、プリント基板の収縮を考慮したものだと言われています

基本は、この基準穴と副基準穴の2つのツーリングホールが設けられています。
ただし、プリント基板が大きくなると、基準穴と副基準穴の間に基準穴または副基準穴が追加されている場合もあります。
あくまで基本が2箇所なのです。

4.ツーリングホールの使われ方

次は、ツーリングホールをどのように使ってプリント基板の位置決めをしているのかという点です。

プリント基板を位置決めする際は、クランプ台というものにプリント基板を取り付け・固定します。
具体的には、ツーリングホールにクランプ台の基準ピンがちょうど嵌まり込むような形になっています。

基準ピンはプリント基板を傷つけないように先端が丸い形状をしており、プリント基板からはみ出ないようなサイズ感になっていることが多いです。
要するに、ツーリングホールにちょうどフィットするような突起(基準ピン)がクランプ台に用意されているので、そこに嵌め込んで確実に位置合わせをしているだけです。

5.余談

ツーリングホールの役割や使い方は明らかになりましたが、名称が若干気になりませんか?
“ホール”は穴のことだから良いですが、“ツーリング”って何でしょう?

ということでツーリングについて調べてみたところ、フライス盤などの切削加工が可能な工作機器にて工作機器と切削工具(ドリル部分)を繋ぐアダプタのことをツーリングと呼ぶそうです
クランプ台とプリント基板を繋ぐアダプタになっているホールだからツーリングホールってことなんですかね?
合っているのかは調べてもわかりませんでしたが、イメージする分には良いのではないかと思います。

以上、「ツーリングホール」についての説明でした。