今回は、「Danteの特徴と導入するメリット」についての説明です。
1.初めに
前回の記事では、Danteというオーディオネットワークテクノロジーがどういったものなのかを解説しました。
今回は、Danteの特徴と、導入することで得られるメリットについて触れていきます。
2.Danteの特徴と導入するメリット
Danteを導入する明確なメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- 使用ケーブルの単純化
- 信頼性の高い接続
- 音質の向上
- 設定の自動化
- コンピュータネットワークとの親和性向上
- 非常に低いレイテンシ
それぞれ補足説明していきますね。
前回の記事で出てきた特徴も混ざっていますが、復習だと思ってください。
使用ケーブルの単純化
従来は重くて嵩張る専用のケーブルがいくつも使用されていたオーディオ業界ですが、Danteはイーサネットに準拠しているので、伝送にはLANケーブルが一本あれば足りるようになっています。
LANケーブルでは双方向通信が行われているので、音声信号の向きを考えずにとりあえずLANケーブルを一本繋ぎさえすれば伝送可能になるというのも良い点です。
INとOUTのポートが各々用意されているのではなく、IN/OUT兼用のポートが一つあるだけなのです。
その為、挿し間違えも起こり得ないというのがより利便性を高めています。
また、チャンネル数がLANポートの数に依存しない点もケーブルの単純化に一役買っています。
後程説明しますが、従来のオーディオネットワークの場合、基本的にチャンネル数が増えるとその分接続ポートも増えました。
ですが、Danteの場合はLANケーブルでパケットのやり取りをすることに変わりはないので、チャンネル数が増えたところでLANポートが増えることはありません。
上記のような利点がある為、結果的に使用ケーブルが単純化され、配線の省電力化・軽量化という視点でも優れたものになっているのです。
ちなみに、Danteの場合は1Gbpsにつき48kHz/512ch、もしくは96kHz/256chの音声信号のやり取りが可能になっています。
使用するLANケーブルの種類
DanteはLANケーブルで伝送できるとは言いましたが、推奨される種類があります。
Danteで使用するLANケーブルは、カテゴリCAT5e(1Gbpsまで、帯域幅100MHz)以上であり、STPケーブル(シールド付きのツイストペアケーブル)が推奨されます。
カテゴリに関しては以下の記事にまとめてありますので、気になった方はそちらを参照してください。
LANケーブルの長さは、イーサネット規格で最長100m(※総延長距離)と規定されています。
場合によっては100mは難しいこともありますが、概ね100mが限界です。
ただ、これは“LANケーブルの”長さです。
Danteの場合はネットワークスイッチを介することがありますが、ネットワークスイッチを介した場合は「機器とネットワークスイッチ間が最長100m」となります。
その為、機器A-ネットワークスイッチ-機器Bという繋ぎの場合、機器A~ネットワークスイッチ及び機器B~ネットワークスイッチをそれぞれ100mのLANケーブルで接続しても問題無いことになります。
どうしても100m以上の長距離配線をしたい場合は、光ファイバーケーブルを用いれば出来ないことも無かったりします。
その場合は光ファイバーケーブルを挿すための光変換モジュールを使う必要がありますし、光ファイバーケーブルは送信用(Tx)と受信用(Rx)に伝送路がわかれているので、送信用端子と受信用端子を間違えないように注意する必要があります。
何かと面倒なんです。
また、一般的なLANケーブルはRJ45というコネクタが使われていますが、Danteの場合はetherCONというコネクタが推奨されていることがあります。
etherCONとは、金属ハウジングを採用した堅牢なRJ45コネクタのことです。
etherCONはツメを使わないタイプのロック方式を採用しているので、挿抜によってツメが折れる心配はありません。
LANケーブルの抜き差しが多い用途であるのならば、etherCONを使用しておくのが無難です。

まあ、そもそもRJ45しかさせないようになっている機器もありますけどね。
見ての通り、etherCONは占有する面積が広がるので、小さな機器で採用するのが難しいです。
また、金属ハウジングがくっついている分コストも上がるので、ケーブルの抜き差しが発生しづらいラック内での配線などを考慮した機器の場合も、普通のRJ45になっていることが多いです。
Danteの接続口を見て円形になっているかどうかでどちらが推奨されているのか判断しましょう。
自分の使い方なら抜き差しは少ないとわかっているのなら、etherCONにRJ45を挿しても問題無いですけどね。
信頼性の高い接続
機器同士をある1本のケーブルで接続していて、そのケーブルが通信に関わるものだったとします。
このケーブル内で断線が発生していたら、普通に通信が出来なくなります。
当たり前ですね。
Danteの場合は、そうならないように設定することが可能です。
どういうことかと言うと、独立した2つのネットワークを並走させて接続できるようになっています。
そうすることで、仮に片方の接続が途絶えたとしても、もう片方の接続が生きているので問題無く通信ができるというわけです。
いわゆる二重化接続になっているんですね。
実際にDante機器を見たことがある人は見覚えがあるかもしれませんが、Danteの接続ポートは1つのこともあれば、PrimaryとSecondaryという2つになっていることもあります。
このPrimaryとSecondaryの2つのポートが用意されている機器では、二重化接続が可能になっているのです。
二重化接続するためには設定をリダンダントにする必要がありますが、その辺りの説明はまた別途解説していこうと思います。
また、セキュリティ面でもDanteは信頼できます。
Danteは簡単に機器同士を接続できるので、そのシステムは逆に言えば誰でも簡単にアクセス出来てしまうということになります。
だからこそ、それに対する対策がしっかりと立てられているのです。
具体的には、「デバイスロック」という簡易的なセキュリティ機能が用意されています。
この機能を利用することで、任意のDante機器の各種設定や音声パッチ操作を禁止することが可能になっています。
設定変更不可とする非常にシンプルですが確実なセキュリティ対策ですね。
このセキュリティでも足りないという場合は、有償ですが「Dante Domain Manager」というものも用意されています。
その機能を簡単にまとめると、「特定の人以外はDanteシステム操作も設定変更も出来ないようにする」です。
詳しく気になったのなら、別途調べてみてください。
音質の向上
デジタルオーディオ化したことによる音質の向上というメリットです。
アナログデータをそのまま取り扱っている場合、ノイズの影響や長距離伝送により音質が劣化してしまいます。
ですが、アナログデータを一度デジタルデータに変換した場合、そのデジタルデータはアナログデータと比較して状態が変動しにくくなります。
要するに、ノイズなどの影響でデータが変化しづらくなるのです。
その結果、元のアナログデータ(音声)をより忠実に再現することが可能になります。
設定の自動化
通常、ネットワーク機器にパソコンを接続しようとした場合、パソコンのIPアドレスをネットワーク機器のIPアドレスに合わせてホストアドレスを変更したものにする必要があります。
また、オーディオネットワーク環境では利便性が向上した分設定項目の選択肢が増えていきます。
するとどうなるかと言うと、専門的な知識が無いと何をどう設定すれば良いのかわからなくなってしまうんですよね。
なのですが、Dante環境の場合はIPアドレスが自動的に割り振られるようになっていたり、接続機器間でパッチ作業(相違点を明らかにして揃える作業)を自動的に実施する機能があります。
その為、パソコンはDHCP(IPアドレスを自動的に取得する設定)のまま変更せずに設定が可能です。
ただし、同じメーカの同じDante機種を複数同一ネットワーク上に接続する場合、ID設定(個体識別するための番号設定)をしておく必要はあります。
同じチームに鈴木さんが二人いたとして、鈴木さんを呼んだら二人共反応してしまうでしょう?
そんな時は、下の名前で呼んだりするはずです。
ここで言うところの下の名前がID設定だと思ってくれれば良いです。
要するに、同じDante機種があったとしても、予め「ID:1」・「ID:2」という具合に設定しておくことで、どの個体なのかを識別できるようにするというだけの話です。
また、クロック同期に関しても自動化されていて、複数台Dante接続されている機器があるとすると、自動で親機と子機に分類されるようになっています。
親機がリーダーとなってクロック信号を出すので、子機はそれにタイミングを合わせて動作するようになります。
この動作はPTPという仕組みに則っているのですが、ここでの説明は割愛します。
コンピュータネットワークとの親和性向上
※これはDanteを導入するメリットというよりオーディオネットワークを導入するメリットです。
オーディオ“ネットワーク”ですので、コンピュータと繋ぐことも容易になっています。
その結果、ソフトウェアで制御したり、通信ネットワーク技術を転用したりと、従来のオーディオシステムでは考えられなかったような使い方をできるようになっています。
要するに、やれることの幅が広がったのです。
非常に低いレイテンシ
レイテンシとは、データ転送要求を出してから実際にデータが転送されてくるまでの遅延時間のことです。
Danteの場合、Dante機器間での通信においては、片道0.25秒程度で伝送が可能と言われています。
その為、往復で0.5秒のレイテンシがあることになります。
以上、「Danteの特徴と導入するメリット」についての説明でした。




