今回は、「Danteの仕組みや従来のデジタル伝送との違い」についての説明です。
1.初めに
前回の通信プロトコルに関する記事にて、プロトコルに関連性のある技術としてDanteというオーディオネットワークテクノロジーについて簡単に説明しました。
今回は、伝送方法の仕組み・ライセンス契約・導入するメリットなど、もう少し踏み込んだ内容について解説していきます。
2.Danteとは?
まずは、Danteとは何なのかのおさらい+追加の踏み込んだ説明をしていきます。
Danteとは、オーストラリアに拠点を構えるAudinate社が開発したオーディオネットワークテクノロジーのことです。
ダンテと読みます。
TCP/IP(インターネットを形成するための決まり事)に準拠してオーディオ伝送を行う技術であるAoIPの一種がDanteです。
オーディオネットワークとは、デジタルミキサーなどのデジタルオーディオ機器と、通信ネットワークの技術を組み合わせた伝送方式のことです。
音(音波)というアナログデータをデジタルデータに落とし込むデジタルオーディオ技術と、大容量データを高速で伝送できるようなネットワーク技術を組み合わせたわけです。
Danteは、複数チャンネルのオーディオデータを圧縮することなくイーサネットを通じて伝送が可能で、非常に低いレイテンシ(データ転送要求を出してから実際にデータが転送されてくるまでの遅延時間のこと)で同期ができます。
要するに、Danteに対応している機器同士なら、異なるメーカの機器だったとしてもLANケーブル一本で簡単に接続・同期が可能になる規格だということです。
通信系統の仕様を眺めていると唐突に「64×64」や「32×32」という表記が登場することがありますが、これはDanteの対応しているチャンネル数のことを表しています。
Danteは双方向通信のオーディオデータ伝送が可能なので、「64×64」なら『機器Aの64チャンネルと機器Bの64チャンネルで相互の伝送が可能ですよ』という意味になります。
チャンネルと言われるとわかりづらいかもしれませんので、「チャンネル=データの通り路」とイメージすると良いかもしれません。
また、Dante対応の変換アダプタも用意されている為、Dante非対応の機器でも接続は可能です。
オーディオデータ伝送の観点では、とにかくLANケーブルを繋いでおけば良くなったのです。
従来は重くて嵩張る専用のケーブルがいくつも必要でしたが、Danteの導入により非常にコンパクトに収まるようになったんですね。
上記のように、Danteというテクノロジーは高い利便性と実用性を持つので、劇場・コンサートホール・ライブ会場などの音響システムを構築する手段として広く普及しています。
3.Danteの伝送の仕組み
Danteは、オーディオネットワーク内でパケット方式にてデータを伝送しています。
パケットとは、ある決まった長さに分割されたデータのことです。
詳しくは以下の記事にまとめているので、詳細はそちらから確認してください。
Danteの伝送の場合、まずはある一連の情報をパケットに分割します。
そして、分割したパケット単位で識別情報を持たせます。
イメージとしては、荷物(オーディオデータ)を小分け(パケット)にして送り、伝票(識別情報)を貼り付けるようなものです。
宅配業者は依頼者が作った送り伝票を見つつ必要に応じて拠点を経由しつつ荷物を送り届けます。
オーディオネットワークでも同様の仕組みになっていて、送信機器が受信機器のアドレス情報を持たせたパケットを用意するので、その情報を元にネットワークを中継しているデバイスが適切な目的地へとパケットを送り届けることが可能になっています。
その為、送信機器と受信機器が直接LANケーブルで接続されているのではなく、間にネットワーク中継デバイスを挟んで間接的に繋がっていたとしても、問題無くデータの伝送ができるのです。
所謂IPアドレスやらMACアドレスの仕組みに則っているというわけです。
その辺りの話もまとめだすとキリが無いので、気になる方は以下の記事をご覧ください。
4.Danteと従来のデジタル伝送方式の違い
Danteはデジタル伝送方式なわけですが、デジタル伝送方式自体はDante発足以前から存在します。
MADIやADATなどの方式が有名です。
ただ、Danteはパケット単位でデータを伝送する方式なわけですが、従来のデジタル伝送方式では手法が全く異なります。
従来のデジタル伝送方式は、ワードクロック(音声信号をデジタル伝送する際に伝送のタイミングを合わせるためのクロック信号のこと)で伝送のタイミングを調整するような手法になっています。
あくまでデータの伝送するタイミングを図っているだけですので、従来のデジタル伝送方式の場合はワードクロック用の配線・制御信号用の配線・音声信号用の配線という具合に、その取り扱うデータの役割ごとに個別に配線を設ける必要がありました。
なので、それぞれの信号用に配線が必要となり、それぞれの接続ポートを用意していました。
このような構成になっている為、取り扱えるデータの量(チャンネル数)が接続ポートの数に依存しますし、決められた箇所同士をケーブル接続する必要があったのでケーブルが縦横無尽に接続され、誤接続の可能性を高める要因になっていました。
ネットワークの構成が複雑で、システムの構築が困難だったんです。
その点、Danteはパケット方式でデータを伝送するようになっているので、ワードクロック用の配線・制御信号用の配線・音声信号用の配線という具合に機能ごとに配線を分ける必要はありません。
ワードクロック用のパケット・制御信号用のパケット・音声信号用のパケットを伝送するようになるだけなので、入出力のポートは共通で良くなるのです。
その結果、LANケーブル1本で接続・同期が可能になっているというわけですね。
そして、パケットの持つ識別情報からデータの伝送先を決定する方式になっているので、決められたポート同士を接続する必要も無くなり、ネットワークスイッチ(ハブ)にまとめてLANケーブルを繋げばそれでネットワークを構成できるようになっています。
物理接続がネットワークスイッチを中心としてスター型のトポロジーになっているので、ケーブル接続が単純化し、挿し間違えするようなことも無くなりました。
このように、従来の伝送方式とDanteでは伝送方式が全く違うのです。
それぞれの伝送の簡単なイメージ図を以下に示しますので、上記の文章と照らし合わせてイメージしてみてください。

Danteを利用した配線だと非常にスッキリするのがわかるでしょう?
※ここで言う「装置」とは、ミキサー・シグナルプロセッサ・I/Oラック・アンプ等のことです。
5.Danteのライセンス契約
Dante機器を開発したいと考えた場合、Audinate社とライセンス契約を結ぶ必要があります。
どんな会社がライセンス契約をしているのかは、以下のWebページに公式が公表しています。

ライセンス契約すると、Audinate社からDanteモジュールというDanteの根幹を担う部品が供給されるので、その部品を自社製品に組み込むことでDanteに対応した製品を世に送り出しているというわけです。
Danteモジュールとしては、16×16(48~96kHz)に対応した Dante Broadway、64×64(48kHz)に対応したDante Brooklyn II、512×512(48kHz)に対応したDante HCなど、製品規模に合わせたラインナップが多々用意されています。
コストと製品規模を天秤にかけて、製品に最適なDanteモジュールを選びましょう。
以上、「Danteの仕組みや従来のデジタル伝送との違い」についての説明でした。




