今回は、「ダイオードのクリッピング作用」についての説明です。
1.ダイオードのクリッピング作用とは?
ダイオードの整流作用を利用した回路に半波整流回路というものがありました。
半波整流回路では、0Vより大きい電圧がダイオードにかかった場合のみ電流が流れるようになっており、その結果プラス方向の波形(順方向電圧)のみ抽出していました。
このように、任意の波形からある値より上もしくはある値より下の成分だけを取り出すことをクリッピングと呼びます。
簡単な話、ダイオードの整流作用を使って交流電圧波形を横一文字にぶった切って、上か下の部分のみを残すことができます。
ちなみに、クリッピングする回路をクリッピング回路と呼んだり、この作用自体をクリッピング作用と呼んだりするようで、呼び方はまちまちです。
2.クリッピング作用の考え方
ダイオードを順方向に繋いでいるだけならすんなり理解できるのですが、図2のような繋がれ方をすると途端に理解ができなくなりませんか?
私も最初は教科書で触った程度の知識量でしたので、普通に意味がわからなかったです。(笑)
ということで、図2の回路を使ってクリッピング作用について説明していきます。
前提として、図2のダイオードは理想ダイオードで電圧降下はしないものとします。
この回路における端子電圧Vの時間的変化がどうなるのか考えてみましょう。
交流電源電圧vは振幅2[V]の正弦波になっているので、瞬時値によってダイオードの動作が変化します。
交流電源電圧が+1~+2Vの場合
まずは交流電源電圧が+1~+2[V]の場合について考えてみます。
代表として、ここでは2[V]で考えていきます。
交流電源電圧が2[V]ということは、A点の電圧も2Vになります。
なので、AB間の回路だけ抜き出して考えると図3のようになります。
理想ダイオードは順方向電圧がかかった時に回路がON(短絡される)になります。
改めて図3を見て欲しいのですが、この図でいうところの順方向はBからAの方向ですよね?
つまり、B(1[V])からA(2[V])の方向なので、順方向に電圧はかかりません。
なので、交流電源電圧が2[V]の場合はAB間の回路はOFF(開放される)になっています。
その為、抵抗Rに交流電源が繋がっているだけの回路と見なせるので、Vは2[V]になります。
以上の理由から、交流電源電圧が+1~+2[V]の場合はV=vが成り立ちます。
交流電源電圧が-2~+1Vの場合
次に、交流電源電圧が-2~+1[V]の場合について考えてみます。
代表として、ここでは0[V]で考えていきます。
先程同様にAB間の回路を抜き出します。
今度はB(1[V])からA(0[V])の方向、つまり順方向に電圧がかかっています。
なので、交流電源電圧が0[V]の場合はAB間の回路はONになっています。
その為、VはAB間の端子電圧を測っているのに等しくなり、直流電源1[V]がそのままVの値となります。
以上の理由から、交流電源電圧が-2~+1[V]の場合はV=1[V]で一定となります。
結果
これで交流電源電圧に対するVの出力がどうなるかわかったので、上記の関係を図示すると図5のようになります。
交流電源電圧が1[V]より大きい場合はV=v、交流電源電圧が1[V]より小さい場合はV=1[V]一定になるので、1[V]以下がクリッピングされた出力になるわけです。
落ち着いて順番に考えていけば思っているより大したことはないはずです。
何事も悩んだらまずは基礎を振り返ってみることが大切です。
以上、「ダイオードのクリッピング作用」についての説明でした。