【基礎から学ぶ光電素子】 LEDの選定方法② ~順方向電流と光度の特性グラフの見方とビンニング/Bin Codeについて~

電気電子
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私たちの身の周りには、電気エネルギーと光エネルギーとの間で変換が可能な部品が存在します。
有名なものとしてはLED…発光ダイオードが挙げられます。
最近では電球型のLEDなんかも市販品として普及しているので、一般人でも手に取る機会は増えているかと思います。
そんなLEDですが、分類としては“光電素子”というものになります。
光電素子には様々な種類が存在しますので、その構造や動作などについてわかりやすくまとめていこうと思います。

今回は、「LEDの選定方法(順方向電流と光度の特性グラフの見方とビンニング/Bin Code)」についての説明です。

1.初めに

前回はLEDの順方向電圧と順方向電流の特性グラフの見方やその観点でのLED選定時の注意点について述べました。
ですが、LED選定時に気にするべき点はこれだけではありません。

LEDは光を発する素子です。
つまり、その種類によって光の見え方が異なります
同じ順方向電流を流したとしても、光が強かったり、弱かったりするのです。
なので、明るい場所で使用したら思ったよりも光が弱くてあまり光っているように見えないだとか、暗い場所で使用したら明る過ぎて目に悪かっただとか、光の見え方に問題が発生することがあります。

ということで、今回は順方向電流と光度の関係と、それに併せてLEDビンニングについて説明していこうと思います。

2.LEDにおける順方向電流と光度の関係

LEDには、その光の強さを表す光度(単位は[cd(カンデラ)])というものが設定されています。

光度とは、ある方向へ照射される光の強さのことです。
LEDがどの程度光って見えるかを表す程度だと思ってくれれば良いです。
光の強さを表す用語の違いについては以前まとめているので、詳細が気になる方は以下の記事を参照してください。

LEDの単位は厳密にはmcd(ミリカンデラ)になっています。
cdの1/1000の単位です。
cdという単位自体にあまり見覚えが無いと、結構混乱するんですよね。

何mcdでどの程度光るという表現はできませんが、とにかく数値が大きいほど明るくなると思っておけば良いです。

光度は基本的には、データシートに順方向電流-光度特性という形でグラフ表示されています。

図1

図1はL-354GというPARALIGHT製のLEDのデータシートから抜粋しました。

グラフを見ればわかる通り、順方向電流が少し上がるだけでLEDの光度は指数関数的に一気に上昇するようになっています
この特性はL-354Gに限った話ではなく、LED全般に共通しています
なので、ちょっと順方向電流が変化するだけで、光り方が結構変わります。
LEDを点灯させる際は、安定した電流源が必要になると覚えておきましょう。

上記のような理由から、別の記事でLED使用時の定電流ダイオードの選び方なんかも紹介していたりします。

また、前回の説明で順方向電流の絶対最大定格に注意するように解説しましたが、順方向電流と光度の特性グラフにおいても同様に注意してください。

図1では100mcdまで実現できる風に描かれていますが、これはダイナミック点灯方式(一定周期で高速点滅を繰り返すLEDの点灯方式)を使った際に可能になるというだけの話です。
常に点灯させ続けるスタティック点灯方式の場合、L-354Gなら順方向電流を20mAより小さく抑える必要があるので、そこを加味して光度を考えていく必要があります。

3.LEDビンニングについて

LEDには、ビンニングというものが設定されていることがあります。
[binning]の略称で、そのままBINと省略して呼ばれていることもあります。
LEDビンニングだと長いので、以降はBINと表記しますね。

このBINとは、簡単に言えば個体差ごとのグループ分けを表しています。

LEDに限った話ではありませんが、同一製品だとしても製造工場・製造時期などの差により、性能の差というのはどうしても出てしまいます。
工作機器のクセ・温度・湿度・材料などに差があるのは当然ですからね。

そこで、同じ型番の製品の中でも更に性能が似通ったものでグループ分けされていることがあります
それがBINです。

LEDの場合、順方向電圧の許容値・光度・波長(光の色に関係)などをグループ分けしていることがあります。

例えば、BINは以下のように記載されていることがあります。

図2

Bin Codeというのは、グループ分けした時のグループ名だと思ってください。

この例を見てみると、順方向電流が20mAの時にLuminous Intensity(光度)が100~120mcdの製品をBin Code7、順方向電流が20mAの時にLuminous Intensity(光度)が120~140mcdの製品をBin Code8としていることがわかります。
つまり、この製品は状況によって光度が100~360mcdの間でブレるので、7・8・9・A・B・C・DのBin Codeにグループ分けしているのです

このBin Codeが型式に組み込まれていたりするので、消費者側はBin Codeを指定することでより用途に適したLEDを選択できるようになっています。
メーカ側としても結果的により詳細な範囲に絞り込んだ製品を提供できるので、BINという存在はWin-Winな関係を築けていることになりますね。

4.順方向電流-光度特性が載っていない場合の考え方

さて、何故BINについてこのタイミングで説明したのか疑問に思いませんでしたか?
理由は、順方向電流-光度特性のグラフに関係してくることがあるからです。

基本的にはデータシートに順方向電流-光度特性という形でグラフ表示されていると説明しましたが、“基本的”と言っているようにデータシートに載っていない場合もあります。
図2の例のように、LEDのBINが設定されている場合はまず載っていないです。

よくよく考えてみればわかることなのですが、光度ごとにBin Codeが分かれるような製品で順方向電流-光度特性を表そうとしても意味が無いです。
先程の例で考えると、順方向電流20mAに対して、Bin Code7なら120~140mcd、Bin CodeDなら285~360mcdになっています。
同じ製品に同じ順方向電流を流しているのにこれだけ光度の差があるので、1つのグラフで表現できるわけがないんですよ。

仮にグラフで表したいのなら、各Bin Codeごとのグラフを記載する必要があります。
そんなことをすると面倒で見にくいからなのか、実際は順方向電流-光度特性に換わって順方向電流-相対光度特性のグラフを載せてあることがあります。
図3におけるRelative Intensityというのが相対光度です。

図3

相対とは、ある基準に対してどの程度差があるのかを指した用語です。
踏切に立ち止まっている時に見た新幹線の速度と、新幹線と並走している車の中から見た新幹線の速度は異なって見れるでしょう?
これが相対という考え方です。
詳しくは以下の記事を参照してください。

図3は、先程示した図2のBin CodeになっているLEDと同じ製品のデータです。
なので、図2から順方向電流が20mAの時のBin Codeごとの光度がわかっている状態です。
その為、順方向電流20mA時を基準である1.0とし、それに対して順方向電流を変化させた際の光度の変化量をグラフ化してあるのです

仮にBin Code7(120~140mcd)の製品を順方向電流10mAで使用する場合、相対光度が0.5になっているので、光度は60~70mcdになるということです。
Bin Code8(140~160mcd)の製品を順方向電流10mAで使用するなら、光度は70~80mcdになります。
これが順方向電流-光度特性が載っていない場合の光度の求め方です。

以上、「LEDの選定方法(順方向電流と光度の特性グラフの見方とビンニング/Bin Code)」についての説明でした。