【基礎から学ぶ光電素子】 LEDの選定方法 ~順方向電圧と順方向電流の特性グラフから適切な運用範囲を読み取る方法~

電気電子
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私たちの身の周りには、電気エネルギーと光エネルギーとの間で変換が可能な部品が存在します。
有名なものとしてはLED…発光ダイオードが挙げられます。
最近では電球型のLEDなんかも市販品として普及しているので、一般人でも手に取る機会は増えているかと思います。
そんなLEDですが、分類としては“光電素子”というものになります。
光電素子には様々な種類が存在しますので、その構造や動作などについてわかりやすくまとめていこうと思います。

今回は、「LEDの選定方法(順方向電圧と順方向電流の特性グラフの見方)」についての説明です。

1.初めに

LEDは、順方向電圧を印加すると発光するダイオードのことです。
つまり、順方向電圧が印加されて、順方向電流が流れることで光るんです。

ただ、順方向であるなら値はなんでも良いというわけではありません。
LEDごとに適切な運用範囲があります。

今回は、LEDに与える電圧・電流の考え方、データシートで気にするポイントなんかを簡単に説明していこうと思います。

2.LEDの適切な運用範囲の見方

LEDに限った話ではありませんが、データシートを見ると無数のパラメータやグラフが書かれていて、初めて見ると何が何やらになる人が多いと思います。
LEDも、最低でも4種類ほどはグラフがあるはずです。
ですが、LEDをちょっと光らせてみることを目的としている場合、気にすべきグラフは1種類だけだったりします
それは、IF-VF特性のグラフです。

IFとは順方向電流のことで、VFとは順方向電圧のことです。
[Forward direction(順方向)]の“F”が付くと覚えましょう。

順方向電圧・順方向電流を与えればLEDは発光するので、このグラフの見方さえ押さえておけば良いのです。

例えば、以下のようなIF-VF特性のグラフが記載してあったとします。

図1

この場合、順方向電圧VFが約1.90~2.08[V]、もしくは順方向電流IFが0.2~20[mA]の範囲なら、少なくともLEDは光ります。
なので、LEDにこの範囲内の電圧・電流を与えられるように回路を組んであげれば良いだけです。

ちなみに、この範囲内で小さい電圧・電流を与えるほどLEDの輝度は低く、大きい電圧・電流を与えるほど輝度が高くなります
実際に光らせてみて、丁度良いと思える輝度を探りましょう。

3.実際の回路素子の選び方

LEDを光らせる単純な回路としては、直流電源・抵抗・LEDを直列に繋ぐだけでOKです。

例えば、24V電源で先程の図1のIF-VF特性を持つLEDを光らせたいとします。
この場合、まずはLEDをどの程度の順方向電流IF/順方向電圧VFで光らせたいのかを決定する必要があります
今回は区切りの良さそうなIF=6[mA]VF=2.0[V]という条件で光らせてみようと考えたとします。

ここまで決定した条件に合わせて抵抗Rの抵抗値を計算します。

図2

まあ、普通に抵抗にかかる電圧と電流を求めてオームの法則を適用するだけですけどね。

まず、抵抗に流れる電流はIFになります。
ダイオードにIFが流れていて、そのダイオードと抵抗は直列に繋がっているので当然ですね。

次に、抵抗の両端電圧VRを求めます。
繋いでいる電源が24[V]でダイオードの順方向電圧(ダイオードでの電圧降下)が2[V]なので、残りの22[V]がVRに当たります。

これで抵抗にかかる電圧と電流がわかりました。
あとはオームの法則を適用して、R=VR/IF=22/(6×10-3)=3666.66…[Ω]≒3.7[kΩ]と求めることができます。
E24系列で最も近いものは3.6[kΩ]なので、抵抗Rは3.6[kΩ]のものを使用すれば良いということになります。
一度理解してしまえば何も難しいことはないんですよね。

4.順方向電流の注意点

絶対最大定格は意識する

LEDに限った話ではありませんが、電気部品・電子部品には絶対最大定格というものが定められています。

絶対最大定格は、絶対に超えてはならない定格ラインのことです。
要するに、絶対最大定格を超えて製品を運用すると部品が壊れます。
物理的に胃に詰め込める量と考えてくれれば良いです。
キャパオーバーすると胃が破けるんですよ。

ここまで順方向電流の適切値の求め方を説明してきましたが、順方向電流の絶対最大定格は超えない範囲で求めましょう。

何故わざわざこんな説明をしたのかというと、絶対最大定格を超える順方向電流を流した場合のIF-VF特性のグラフがデータシート上に載っていることがあるからです。

図1の場合は実用的な範囲のみを記してくれているように見えますが、以下のようなグラフが載っていることがあります。

図3

このグラフはL-354GというPARALIGHT製のLEDのデータシートから抜粋したものなのですが、L-354Gの順方向電流の絶対最大定格は20mAになっています。
50mAも流せないでしょう?

連続順方向電流とピーク順方向電流

では、何故このように一見無駄に思える50mAまでの範囲が記載されているのかというと、条件次第では順方向電流を50mA流しても問題無いからです。

絶対最大定格の定義と矛盾している気がするかもしれませんが、それは時期尚早です。

L-354Gの順方向電流の絶対最大定格は20mAだと言いましたが、厳密には「L-354Gの“連続”順方向電流の絶対最大定格が20mA」だからです。
つまり、ずっとLEDを点灯させるような使用方法なら20mAを超えないように設計する必要があるのですが、瞬間的になら20mAを超えても問題無いのです

実際、L-354Gには連続順方向電流の他にピーク順方向電流というものが定められています。
そして、L-354Gのピーク順方向電流の絶対最大定格は80mAです。
だから、IF-VF特性のグラフが50mAまで記されていたんですね。

瞬間的に順方向電流を流すと言うのは、前回説明したダイナミック点灯方式(一定周期で高速点滅を繰り返すLEDの点灯方式)を使えということです。

L-354Gの場合は「Duty-0.1,1KHz」と書かれているので、0.1kHzもしくは1kHzでの高速点灯なら順方向電流の絶対最大定格は80mAになるということを表しています。

以上、「LEDの選定方法(順方向電圧と順方向電流の特性グラフの見方)」についての説明でした。