【基礎から学ぶトランジスタ】 MOSFETのスイッチング特性 ~寄生容量と寄生ダイオードの影響について~

電気電子
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私たちの身の周りにある電子製品には、様々な電子部品が使用されています。
そんな中でも、特に根幹的な部分に使用されている重要な部品として、トランジスタという部品が存在します。
何かしらのICが存在したのなら、トランジスタはほぼほぼ使用されています。
本記事では、そんなトランジスタの種類・構造・特性などについてまとめてみました。

今回は、「MOSFETのスイッチング特性と寄生容量と寄生ダイオードの影響」についての説明です。

1.初めに

FETには、トランジスタ同様に信号を増幅する機能と回路をON/OFFするスイッチング機能があります。
過去の記事で増幅回路についてはまとめてきたので、次はスイッチング機能に焦点を当てていこうと思います。

ということで、今回は寄生容量と寄生ダイオードがスイッチング特性に与える影響について解説していきます。
増幅回路についても学びたい場合は以下の記事を参考にしてください。

ちなみに、説明時に出てくるFETは、一般的によく使われているエンハンスメント型のMOSFETとしています。

2.MOSFETのスイッチング特性と寄生容量

スイッチにとって重要な要素とは何だと思いますか?
それは、ON/OFFが完全に切り替わるまでの時間です。
何かあった時のための非常停止スイッチを押したのに、反応するまで数秒のタイムラグがあったら意味が無いでしょう?

この考え方は、FETのスイッチング動作にも言えます。
切り替わりは速い方が性能が良いのです。

MOSFETをスイッチング用途で使用する場合、この切り替わり時間に影響してしまう寄生容量(浮遊容量)というものが構造上発生します。
具体的には、入力容量・出力容量・帰還容量という3種類の寄生容量がスイッチング特性に影響します。
MOSFETのデータシートを参照すると、この3種類は大体載っているはずです。

寄生容量のイメージとしては、以下のようになっています。

図1

入力容量Ciss

入力容量Cissは、ゲート-ドレイン間容量Cgdとゲート-ソース間容量Cgsの和のことです。
MOSFETを制御するために電圧を印加する入力側(ゲート端子側)から見た時の全体の容量を指しています。

ゲート電圧を印加してON状態にしようとすると、まずはこの入力容量への充電が開始されてしまいます。
その充電している時間分スイッチングが遅れるわけです。

出力容量Coss

出力容量Cossは、ドレイン-ソース間容量Cdsとゲート-ドレイン間容量Cgdの和のことです。
出力側(ドレイン端子側)から見た時の全体の容量を指しています。

ON状態からOFF状態に切り替えた場合、出力容量に蓄えられた分の電子を放出するまでは完全なOFF状態にはなりません。
なので、出力容量が大きいほど放電に時間がかかり、スイッチングが遅れるわけです。

帰還容量Crss

帰還容量Crssは、ゲート-ドレイン間容量Cgdのことを指しています。
逆伝達容量とも呼ばれます。

入力容量と出力容量のどちらにも含まれているパラメータであることからわかる通り、帰還容量が大きいとゲート電圧を印加してON状態にした際にドレイン電流の立ち上がりが遅くなり、逆にOFF状態にした際にドレイン電流の立ち下がりが遅くなります。
スイッチング速度に大きく影響するのが帰還容量なのです。

これらの寄生容量はドレイン-ソース間電圧VDSに依存し、VDSを大きくするほど各容量値は小さくなっていきます。

3.MOSFETに寄生容量が存在する理由

寄生容量のスイッチングへの影響については理解できたとして、そもそも何故寄生容量が存在するのかを疑問に思いませんでしたか?
その補足説明をしていきますね。

MOSFETの構造は、以下のようになっていました。

図2

このnチャネル型・エンハンスメント型MOSFETを例に考えていきます。

ゲート-ドレイン端子間及びゲート-ソース端子間には、酸化膜絶縁層があります。

コンデンサの構造を思い出してほしいのですが、コンデンサって2枚の電極板の間に誘電体(絶縁体)が挟まったものを指していましたよね?
それを念頭に置いてゲート-ドレイン端子間及びゲート-ソース端子間をよく見ると、コンデンサみたいな構造になっていませんか?
電極間の間に誘電体(酸化膜絶縁層+半導体)が挟まれていますよね?
だからゲート-ドレイン間容量Cgdとゲート-ソース間容量Cgsが存在します。

次にドレイン-ソース端子間について見ていきます。

反転層を形成してドレイン-ソース間に電流を流れるようにした接続は以下のようになります。

図3

この接続をよく見ると、ドレイン端子とサブストレート(ボディとも呼ばれる)の間にpn接合ダイオードが形成されていることがわかります。
このダイオードのことを寄生ダイオードと呼びます。

図4

この寄生ダイオードの接合に静電容量が発生するので、ドレイン-ソース間容量Cdsが存在するのです。

ちなみに、寄生ダイオードは内部ダイオードボディダイオードと呼ばれていることもあります。

4.寄生ダイオードが存在する理由

ドレイン端子とサブストレートの間に形成される寄生ダイオードについてですが、そもそも何故このようなものを用意しているのでしょうか?

質問の意図が分からない方は、図3を改めて見てみましょう。
MOSFETの動作にサブストレートって使われていますか?
使われていないでしょう?
なのにわざわざ繋いであるんです。
つまり、わざと寄生ダイオードができるようにサブストレートを用意しているんです
要は、ここに寄生ダイオードを形成したい理由が存在するんです。

さっさと答えを言うと、寄生ダイオードは回路保護用に用意しています。
異常発生時を想定して逆方向に電流が流れてきた際、ダイオードを逆方向に並列接続することはよくあるんです。

他にも、回路上のコイルなどが保有しているエネルギーを早く逃がすための逃げ道などとして使用されることもあります。

どのような理由にせよ、想定した通常の動作とは反対向きに電流が流れた際にしか働かないので、基本的にくっついていることにデメリットが無いんです

以上の理由から、構造上ダイオードを形成するのは簡単なので、寄生ダイオードを標準で形成しているのです。
機能上ダイオードを繋ぎたくなった時に寄生ダイオードで事足りるのなら、外付けする必要が無くなって小型化に結びつきますからね。

ちなみに、MOSFETの回路記号(図記号)にてドレイン-ソース間にダイオードがくっついていることがありますが、アレは寄生ダイオードを表示しているだけだったりします。

図5

以上、「MOSFETのスイッチング特性と寄生容量と寄生ダイオードの影響」についての説明でした。