今回は、「ジャンプVカット」についての説明です。
1.初めに
「基板の初歩的な用語の説明」にて一度説明していますが、何かしらの理由で基板を切り離す方法としては、“Vカット”と“ミシン目”の2つの手法が存在します。
大まかにまとめると、以下のような違いがあります。
直線的なV字型の溝のこと。
板チョコとかアイス最中の溝みたいなものがプリント基板にもあるイメージ。
端面から端面までの直線にしか入れることができないので、円形にVカットを入れるなどの器用なことはできない。
バリが出ないで綺麗に切離しが可能。
2mm幅程度の細長い切り抜き穴のこと。
斜め方向に形成することが可能。
バリが残る。
この2つの手法を場合によって使い分けているのですが、実はVカットには“ジャンプVカット”という特殊な手法が存在します。
ということで、今回はジャンプVカットとは何なのかについて解説していきます。
2.ジャンプVカットとは?
私は先程、Vカットの説明にて以下のように述べました。
“端面から端面までの直線にしか入れることができない”
基本的なVカットはこの考えで合っています。
ルータなどの工作機器を使用して、V字型の溝を真っ直ぐに形成するのです。
なのですが、技術が進歩して実現可能になったのか、基板端からでなくともVカットを形成する手法が確立されています。
それがジャンプVカットです。
ジャンピングVカットと呼ばれていることもあります。
例えば、Vカットというと以下のようなイメージとなります。

基板上端から基板下端まで一直線にVカットが入っているので、そこに沿って基板を分割することが可能です。
これに対して、以下のようなVカットを形成することも可能です。

先程とは異なり、Vカットが基板下端まで形成されていませんね。
これがジャンプVカットです。
ジャンプVカットする際の特徴は、Vカットを途切れさせる始点・終点部にはスリットができることです。
図2でも、Vカットが基板端に達していない下側にはスリットが形成されているでしょう?
そうしてスリットを形成する分、プリント基板全体のサイズはVカットのみの場合よりも若干大き目である必要があります。
実際にVカットを入れる工程を見たことがないので実際にどのようになっているのか不明ですが、ルータなどの工作機器でVカットを形成するので、スリット部分にVカット形成用の刃が到達したらプリント基板をうまく取り外せるんでしょうね。
ちなみに、ジャンプVカットの実物は以下のような感じになります。

途中まで普通のVカットで、端部にスリットが入っているでしょう?
3.ジャンプVカットは基板端を始点としなくても良いかも?
ジャンプVカットは、基本的には基板端スタートでもう片方の端部がスリットになります。
なのですが、必ずしもそうしなければならないというわけではありません。
具体的に言うと、Vカットの始点・終点にスリットで逃げを作っておけば、ジャンプVカットに対応している場合があります。
設備によっては不可能かもしれませんけどね。
というのも、インターネットで調べると基板端スタートのジャンプVカットの説明しか出てこなかったんですよね。
なのですが、私が依頼したメーカでは対応していました。
※次項で実例が出てきます。
ちなみに、P版.comのリジット基板製造基準書という資料なんかを見ると、「Vカットの起点は基板端からでないと不可」と記載されています。
4.ジャンプVカットをする理由
ジャンプVカットという技術があるのはわかっていただけたと思いますので、次はジャンプVカットをする理由について記述していきます。
実例なのですが、基板設計を外注してレビューを実施した際、以下のような基板割りにしていました。

小型の基板だったので、同種基板を4面付けすることになり、Vカットを縦に3本入れた形になっています。
また、部品配置の問題で、捨て基板は上下左右方向にあります。
面付けや捨て基板については別途まとめてあるので、ここでの説明は割愛します。
気になる場合は以下の記事を参照してください。



これに対して、基板実装技術Gの方から、『おそらく問題無いが、リフロー時に基板反りリスクがあるのでジャンプVカットに変更対応して欲しい。』という要望がありました。
その結果、以下のような基板割りになりました。

内側の縦3本のVカットが、先程述べたような始点・終点にスリットで逃げを作ったジャンプVカットに変化していますね。
これが基板反り対策になるらしいです。
Vカットをするとその部分は基板が薄くなるわけですので、その関係で基板が反りやすくなるのかもしれません。
その点、ジャンプVカットにして捨て基板部分のVカットが無くなっているので、基板が反りにくくなっているということかと思います。
他には、以下のように異種基板を集成した際に活用するのもありです。
ジャンプVカット端部にはスリットができるのでそこを許容できるかどうかのみ注意が必要ですが、許容できるのならミシン目にした時のようなバリも出ませんので比較的綺麗な割れ目になります。

以上、「ジャンプVカット」についての説明でした。


