【電気部品・電子部品の解説】 水晶デバイスとは? ~水晶を使って一定の周波数を生み出すデバイス~

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電気の仕事をしていると様々な部品を用いる機会が出てきます。
コイル・コンデンサ・IC・コンバータ・パワーサプライなどなど…名前は聞いたことあるけどイマイチ何なのか理解していないものもあるのではないでしょうか?
この記事では、そんな部品について基本からわかりやすく解説していけたらと思っています。
機械部品に関する記事も混ざってたりしますが、深く考えないでください。

分類するのが面倒だっただけです。

今回は、「水晶デバイス」についての説明です。

1.水晶デバイスとは?

水晶デバイスとは、水晶振動子や水晶発振器と言った「水晶を使って一定の周波数を生み出すデバイス」を指しています。

水晶デバイスが作り出す周波数は安定性・精度共に高水準です。
その為、身近な電子機器によく使用されています。

例えば、電波通信ってありますよね?
あの通信は、通常時は基準となるただの正弦波が送受信されています。
この正弦波は、『今は何も伝えてないよ!』とお互いに認識する為の信号です。
この正弦波に伝えたい情報を上乗せしてひずみ波にした状態で送受信し、そこから基準となる正弦波を差し引くことで伝えたい情報を抽出しているのです。

この基準の正弦波は、基準とするだけあって高い安定性・精度を要求されます。
基準が乱れていたらそこから得られる情報が滅茶苦茶になりますからね。
そこで、作り出す周波数の安定性・精度が高い水晶デバイスが使われているのです。

この辺りの仕組みをもう少し詳しく知りたい場合は以下のリンクも参考にしてみてください。

他にも、水晶デバイスから発生した周波数にタイミングを合わせて様々な機器を動作させることで電子機器が成り立っていたり、時間を合わせるための基準として使用していたりもします。
回路図においてCPU周りに「××MHz」と書かれている素子があったらそれは水晶デバイスのことです。
結構どこにでも使用されているのです。

最も身近な例としてよく挙げられているのはクォーツ時計です。
クォーツ時計とは、最近の時計全般を指しています。
壁に取り付けた時計や、腕時計です。
※ クォーツの意味は石英なので、水晶を指しています。

昔の時計はぜんまいばね(弾性物質を渦巻き状にしたもの、元に戻ろうとする力を利用する)を使用した機械式が普及していました。
ですが、水晶デバイスの登場により機械式時計の数百倍の精度があるクォーツ時計が普及し始め、今となってはほぼほぼクォーツ時計に切り換わっています。

水晶デバイスは一定の周波数を得ることができます。
1Hzの振動にかかる時間は1秒です。
ということは、どうにかして水晶デバイスで1Hzを作り出してしまえば、時計に応用できるわけです。
そこで、32.768kHzをICにより1/2に分周し続けることで1Hzを作り出し、クォーツ時計という形で製品化しているのです。

2.水晶振動子とは?

水晶振動子とは、水晶の逆圧電効果を利用して一定の周波数を生み出す受動素子(電気エネルギーを消費する・供給する側の素子)のことです。

圧電効果とは、水晶やセラミックスなどの特定の物質に機械的(物理的)圧力を加えた時に、圧力に比例した電荷が物質の表面に現れて電界が発生する現象です
簡単に言えば、水晶を何かでぶっ叩くと水晶に繋いだ回路に電気が流れるようになります

逆電圧効果は圧電効果の逆で、電圧を印加する(電気を流す)と水晶やセラミックスなどの特定の物質がひずむ現象を指しています。
つまり、水晶振動子とは電圧を印加することで水晶が震える現象を利用して特定の周波数を得られる素子のことです。
物理的にブルブル震えてるんですよ、これ。

水晶の振動を電気に変換することで規則正しく振動する電気信号を得ることができます。
ただ、水晶振動子には振動を電気に変換する回路は搭載されていません。
なので、発振回路(インバータ・抵抗・コンデンサなどで構成されている)と組み合わせて初めて意味を成します。

発振回路の基本形は以下の通りです。

図1

水晶振動子・インバータ(NOT回路)・帰還抵抗Rf・振幅制限抵抗Rd・コンデンサで構成されています。
こうして作られたパルス信号のことをクロック信号と呼びます。

ちなみに、実際に水晶振動子に使用されている水晶は、ラスカという天然の水晶を原料とした人工水晶です。
昔は天然物を使用していたのですが、純度や大きさにバラつきが生じるので、いつしか人工水晶を使うようになりました。

3.水晶振動子の構造

水晶振動子の主な材料は、「セラミックベースと呼ばれる容器」、「水晶基板(所定のサイズにカットした水晶に電極を蒸着してある)」、「不活性ガス」、「金属カバー」です。

まず、セラミックベースに導電性の接着剤などを使って水晶基板を貼り付けます。
この時、水晶は中空に浮いた状態にします。
ここに不活性ガスを充填し、金属カバーで蓋をして完成です。
こうすることで、セラミックベースに電圧を印加した際に内部の水晶が規則正しく震えるようになります

構造自体は単純なのですが、水晶基板部分に繊細な技術が必要なので、簡単に作れるというわけではないです。

水晶基板の周波数は、水晶の厚みに反比例します
水晶基板の周波数[kHz]=1650~1670程度÷水晶の厚み[mm]という計算式が成り立っているようです。
つまり、水晶を薄くすれば薄くするほど高い周波数を得られます
中空に固定した薄い板(下敷きとか)と厚い板に同じ力を加えて開放した場合、どちらの方が振動しそうか考えればこの関係はイメージできるかと思います。

ちなみに、水晶の実際の厚さは数十ミクロン[μm]であることが多いです。
これは、よく使用されている周波数帯がMHz帯だからです。

4.水晶発振器とは?

水晶振動子は発振回路を別途用意する必要がありました。
それに対し、水晶振動子と発振回路をワンパッケージ化した製品があります。
それが水晶発振器です。

水晶発振器は、電圧を変化させることで周波数も可変になるという大きな特徴を持ちます。

また、発振回路とは別に水晶が環境変化(温度変化)から受ける影響を補正するなど、製品によっては追加の回路も組み込まれています。

5.水晶発振器の構造

水晶振動子の主な材料は、「セラミックベースと呼ばれる容器」、「IC」「水晶基板(所定のサイズにカットした水晶に電極を蒸着してある)」、「不活性ガス」、「金属カバー」でした。
水晶振動子と発振回路をワンパッケージ化したものが水晶発振器なので、変化点は「発振回路が増える」です。
その為、構造としてはパッケージ内にICが追加されただけとなります。

6.水晶の切り方で特性が変わる

人工水晶を製作しているメーカでもない限り詳しく理解しておく必要は無いのですが、人工水晶はその切り方によって温度特性や振動モードが変化します。

よく使用する周波数帯域の場合、ATカットと呼ばれる手法を用いられていることが大半です。
水晶振動子の説明で水晶基板の周波数は水晶の厚みに反比例すると述べましたが、これはATカットの特徴です。

以上、「水晶デバイス」についての説明でした。