今回は、「ノイズの伝導モード(ノーマルモードとコモンモード)」についての説明です。
1.初めに
過去のEMIとEMSとEMCの記事で、EMIの試験には放射エミッション試験と伝導エミッション試験の2種類が存在すると述べました。
要は、放射ノイズ(空間から放射されてくるノイズ)と伝導ノイズ(プリント基板の回路パターンやケーブルなどを伝ってくるノイズ)について検証するわけです。
この伝導ノイズは、伝導してくる経路によってノーマルモードノイズとコモンモードノイズの2種類に分類できます。
このノーマルモードとコモンモードって何も説明が無く突然説明に出てくることが多いんですよね。
それだけノイズ対策の話をしていると当たり前のように知っていないといけない内容だということです。
今回は、そんなノーマルモードとコモンモードについて解説していきます。
2.ノーマルモードノイズとは?
ノーマルモードノイズとは、電源から流れる電流と同じ経路を辿るノイズのことです。
ディファレンシャルモードとも呼びます。
図1のように外部電源を電子機器に供給していて、電子機器内のPCBにノイズ源があったとします。

この時、電源と回路の間では、行きの通り路と帰りの通り路が明確になっていますよね?
このように、信号ラインにノイズ源が直列に存在し、信号ラインに沿って伝達されるノイズがノーマルモードノイズに当たります。
信号の[normal(標準・正規)]の経路を辿るノイズということですね。
電源を基準とした際、行きの通り路(電源のプラス側)と帰りの通り路(電源のマイナス側)を通る際のノイズの向きが反転していることから[differential(差異・差動)]ノイズとも呼ばれるわけです。
「電源ライン間をノイズが流れる向きが反転している」とも言えます。
その為、ノーマルモードノイズ起因の放射ノイズに関しては、行きと帰りの経路で打ち消し合うので、そこまで気にする必要が無かったりします。
まとめると、大元の信号に合わせてぐるっと一周循環するようなノイズがノーマルノイズというわけです。
3.コモンモードノイズとは?浮遊容量とは?
ノーマルモードノイズは信号に乗ってくるタイプのノイズでした。
この言い方だと、大元の信号に乗ってくることはないノイズがあると逆説的に言っていると思いませんか?
実際その通りで、そんなノイズのことをコモンモードノイズと呼びます。
コモンモードノイズとは、リターンの経路が大地や筐体を経由するようなノイズのことです。
ノーマルモードノイズは信号経路の途中にノイズ源がありましたが、コモンモードノイズは信号ラインと基準GNDの間にノイズ源が存在します。

話は変わるのですが、コンデンサって電極板が並んで構成されていますよね?
そして、間に誘電体または絶縁体を挟むわけですが、究極的に言うと空気だって絶縁体の一部なんですよ。
もし空気が導電体だった場合、電気製品に電源投入しただけで空気を通じて感電しますからね。
そんなことあり得ないでしょう?
まあ、あまりにも高電圧がかかると雷のような現象は発生しますけども…。
何が言いたいのかと言うと、導体の近くに別の導体が並んでいると、それだけでコンデンサに見立てることができるんです。
このような目に見えないコンデンサ成分のことを浮遊容量と呼びます。
この浮遊容量があると何が起こるのかというと、浮遊容量を介して大地や筐体を経由し、ノイズが循環してしまうことがあるのです。
例えば、図2を例に考えると、以下のような経路でノイズが循環することがあります。

このような経路のノイズがコモンモードノイズです。
電源を基準とした際、行きの通り路(電源のプラス側)と帰りの通り路(電源のマイナス側)を通る際のノイズの向きが同じになっている(図3の場合は左から右方向)ことから[common(同じ)]ノイズと呼んでいるわけです。
図3を改めて見ると、回路を経由する経路と回路を経由しない経路が存在し、それらの経路がどちらも基準GNDを通っていますよね?
ということは、基準GNDのラインでノイズが重なって強め合ってしまいます。
ここでもし他の箇所にもノイズ源が存在したらどうなるでしょうか?
答えは、そのノイズも含めて基準GNDで重なり合い、より大きなノイズ成分となってしまうのです。
すると、伝導ノイズが積もりに積もって大きなノイズとなり、放射ノイズを発するノイズ源になり兼ねないんです。
実際、ノーマルモードノイズとコモンモードノイズで同じ電流が流れている場合、コモンモードノイズはノーマルモードノイズの数百倍~数千倍程度の電波ノイズを放射すると言われています。
その為、製品開発においてコモンモードノイズ対策が課題となることは多々あります。
どこを経由してループが発生しているのか特定するのは難しいですし、仮に一箇所対策したとしても今度は他の箇所を経由してコモンモードノイズが発生してしまう…なんてこともあるからです。
また、シールド処理する時はGNDに落とすのが普通ですが、コモンモードノイズに関してはGNDを経由することにより大きな放射ノイズを生む可能性を孕んでいるので、敢えて接地しない方が良いということもあります。
実際、シールドケーブルのFGを両端側接地するよりも、片側だけ接地した方がノイズ耐性が上がった事例が過去にあります。
コモンモードノイズは管理が難しいんですよ。
ちなみに、浮遊容量は非常に小さな容量となっていますが、通過する信号周波数が高いとインピーダンスは小さくなります。
つまり、高周波ノイズは浮遊容量を経由しやすくなってしまうのです。
以上、「ノイズの伝導モード(ノーマルモードとコモンモード)」についての説明でした。



