今回は、「無効電力のイメージ(コンデンサで無効電力が発生する仕組み)」についての説明です。
目次
1.皮相電力・有効電力・無効電力について
皮相電力・有効電力・無効電力って知っていますか?
本ブログでも解説はしているのですが、それぞれ以下のようなものを表しています。
- 皮相電力は、実際に消費される電力ではなく、見かけ上の電力。
- 有効電力は、負荷で実際に消費される電力。
- 無効電力は、仕事をせずに電源に回帰する電力。
この説明を見て、どう思いましたか?
私は、無効電力だけイマイチ理解できなかったんですよね。
皮相電力は、実際に供給された電力です。
そして、有効電力は実際に消費された電力です。
この2つは普通に意味を汲み取れるのですが、無効電力だけ“仕事をせずに電源に回帰する電力”という変な言い回しをしているんですよね。
ということで、今回はコンデンサにおける無効電力について解説していこうと思います。
2.コンデンサで無効電力が発生する仕組み
コンデンサの基本的な性質は、以下の通りです。
- 電荷を蓄えたり放出したりできる。
- 電圧の変化に応じて電荷を蓄えるか放出するかが切り替わる。
コンデンサに繋いだ電源をONするとコンデンサに電荷が蓄えられ、電源をOFFするとコンデンサに蓄えられた電荷が放出されます。
もう少し詳しく説明すると、コンデンサに掛かる電圧の変化量が大きければ大きいほど、電荷を蓄える/放出する量が多くなります。
電荷の流れ=電流なので、コンデンサに掛かる電圧の変化量が大きいと、それだけ多くの電流が回路に流れるようになると思ってくれれば良いです。
また、コンデンサに掛かる電圧の変化量が大きいほど電荷量も変化するので、逆に言うと電圧の変化量が0なら電荷量の変化も0になり、回路にコンデンサによる電流は流れなくなります。
このように、コンデンサは掛かる電圧によって充電/放電を繰り返す電子部品となっています。
では、コンデンサで放電して回路に電流を流すためにはどうすれば良いでしょうか?
答えは単純、充電しておけばいいですよね。
これは、言い換えると、蓄えた電荷の分だけ放電できるということです。
では、コンデンサに電荷を蓄えた状態って何なのかというと、コンデンサに静電エネルギーが蓄えられた状態になっているんですよ。
この静電エネルギーが溜まった分だけ、放電できるようになるのです。
つまり、コンデンサの性質はコンデンサ内で発生している静電エネルギーが地産地消されることで実現されているのです。
ここで思い出してほしいのですが、無効電力は“仕事をせずに電源に回帰する電力”のことでした。
この説明に、静電エネルギーが合致しているんですよ。
“仕事をせずに電源に回帰する電力”というと難しく考えてしまいますが、言い換えると“負荷を動かすために消費されずに回路に戻ってくる電力”になります。
コンデンサの静電エネルギーは、コンデンサに電圧が掛かると蓄えられ、コンデンサに電圧が掛からなくなると蓄えられた分だけ消費されます。
コンデンサという負荷を動かすために蓄えられているのではなく、性質として勝手に蓄えられ、勝手に還元されているんです。
だから、コンデンサで言うところの無効電力は静電エネルギーのことを指しているのです。
3.実際の動き(電圧と電流の動き)
コンデンサの無効電力は電圧の変化によって生じる静電エネルギーのことだとわかりました。
なので、次は実際の動作についてもう少し深堀りしていこうと思います。
そもそも、電圧が変化しないと無効電力が発生しないわけですので、直流の場合は無効電力は発生しません。
交流のように変化がある場合に無効電力が発生します。
ということで、正弦波交流電圧がコンデンサに掛かった際の動きについて見ていきます。
①原点の状態
まずは、原点での電圧と電流の関係から見ていきます。
これから考えていくのは、図1のような正弦波交流電圧波形に対して、電流はどのように変化するのかです。

先程、コンデンサに掛かる電圧が大きいほど電流の変化量が大きくなると述べました。
では、図1の正弦波交流電圧波形の内、電圧が最も大きく変化している点はどこでしょうか?
答えは、原点(0点)、位相が180度進んだタイミング、位相が360度進んだタイミングです。
ということは、原点時点で流れる電流は最大になっているんですよ。
原点では電圧が負→正の方向に掛かっているので、コンデンサに流れる電流は正方向と考えます。
結果、原点到達時に流れる電流は正の方向に最大となります。

②電圧が0から+VPに達するまでの動作
次は、コンデンサに掛かる電圧が0からプラスのピーク値である+VPになるまでの動きについてです。
①同様に電圧が負→正の方向に掛かっているので、コンデンサに流れる電流は正方向のままです。
ただし、電圧が0から+VPに変化するにつれて、電圧の変化量は落ちますよね?
ということは、少しずつ流れる電流量自体は小さくなっていくんです。
そして、完全に+VPに達した際には電圧の変化量は0になるので、流れる電流量も0になります。
結果、電圧と電流の関係は以下のように変化します。

③電圧が+VPから0になるまでの動作
今度はコンデンサに掛かる電圧が+VPから0に向けて減っていきますので、コンデンサに流れる電流の向きが反転します。
そして、電圧の変化量は0点に達した時点で最大になる為、流れる電流量も最大になります。
結果、電圧と電流の関係は以下のように変化します。

④電圧が0から-VPに達するまでの動作
次は、コンデンサに掛かる電圧が0からマイナスのピーク値である-VPになるまでの動きについてです。
③同様に電圧が正→負の方向に掛かっているので、コンデンサに流れる電流は負方向のままです。
ただし、電圧が0から-VPに変化するにつれて、電圧の変化量は落ちますよね?
ということは、少しずつ流れる電流量自体は小さくなっていくんです。
そして、完全に-VPに達した際には電圧の変化量は0になるので、流れる電流量も0になります。
結果、電圧と電流の関係は以下のように変化します。

4.実際の動き(静電エネルギーの動き)
ここまでは、コンデンサに正弦波交流電圧を掛けた場合の電圧と電流の変化について見てきました。
説明がややこしくなるので静電エネルギーの説明は意図的に省いていましたので、次は静電エネルギーについても触れていきます。
コンデンサに掛かる電圧が変化すると流れる電流も変化するので、電圧が変化している間はコンデンサは充電されている状態となります。
つまり、電圧の変化が0になったタイミング(下図における黄丸箇所)では、最も充電された状態になっていることになります。

そして、電圧の変化量が0になった後は電圧の変化する向きが反転します。
+VP地点を例に考えますね。
+VP地点に達したタイミングでは、+VPの電圧が掛かった場合の静電エネルギーが蓄えられた状態となります。
静電エネルギーはCV2/2で表されるので、この地点での静電エネルギーは最大になります。
※Cは静電容量で、コンデンサ固定の定数。なので、静電エネルギーは変数であるV(電圧)に依存する。
では、+VP地点から少し時間を進めると、コンデンサに掛かる電圧はどうなりますでしょうか?
+VPより小さくなっていますよね?
ということは、コンデンサの静電エネルギーはCV2/2に則って減少するんですよ。
では、静電エネルギーが減少した分何をしているのかと言うと、コンデンサから回路に向けて放電をしています。
+VPに達するまでは充電していたのに対し、+VPを超えると放電に切り替わるのです。
だから、電流の流れる向きが反転しているんですよ。
充電→放電に変化しているんですからね。
実際、+VPと-VPに達したポイントを境に、電流の向きが反転しているでしょう?
そして、電圧が0になるタイミングまでコンデンサの静電エネルギーを使って放電し切るのです。
そうしてコンデンサの電荷・静電エネルギーが空になるので、そこから今度は逆方向に充電が始まるのです。
要するに、1/4周期ごとに充電と放電が切り替わっていて、半周期ごとに充放電する方向が反転しているのです。

このように、静電エネルギー(無効電力)を蓄えて、蓄えた分だけ回路に還元して、また蓄えて…とずっと繰り返しているんですね。
ややこしいでしょう?
だから、電圧と電流の変化の時は説明しなかったんですよ。
ちなみに、コンデンサに電圧を掛けると電流の位相は90度進むと聞いたことがあるかもしれませんが、なんでそうなるのかは図2~図5で説明済みだったりします。
電流波形の位相に対して、何秒か経過しないと電圧の位相は揃わなくなっているでしょう?
だから、電圧に対して電流が“進んでいる”のです。
以上、「無効電力のイメージ(コンデンサで無効電力が発生する仕組み)」についての説明でした。




