【基礎から学ぶ設計思想】 トレラント機能とは?データシートでよく見かける“5Vトレラント”の意味について解説!

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回路設計を行う上で考慮すべき事柄は、使用環境・製品寿命・性能のバラつき・熱の影響・ノイズの影響など多岐に渡ります。
突き詰めていくと際限が無いので、本記事では設計時に意識しておくべきだと感じた内容についてわかりやすくまとめています。
考え方自体は回路設計以外にも通じるものがあるので、知っていて損をする内容ではないかと思いますよ?

今回は、トレラント機能(5Vトレラントの意味)についての説明です。

1.初めに

ICのデータシートを眺めていると、知らない用語がこれでもかと登場します。
都度補足説明があれば良いのですが、専門用語であってもその業界においては基礎知識に当たるような用語は一切説明が存在しないということは珍しくないです。
今回は、そんな用語である“トレラント機能”についてわかりやすく解説していきます。

ちなみに、データシート上では、“トレラント機能”というより“5Vトレラント”と記述されていることが多いです。
大体英語表示なので、[5V tolerant]です。

[tolerant]は[寛容な・耐性のある]という意味を持ちます。
初見では英語の意味からは何を指しているのか想像が付きませんが、一度理解してしまえば[寛容な]で意味が結びつくようになるはずです。
前提知識としてCMOSについて知っている必要があるので、自信が無い場合は併せて以下の記事も参考にしてみてください。

【基礎から学ぶトランジスタ】 CMOSロジックとは? ~n型/p型MOSFETを用いた実用的な論理回路~
私たちの身の周りにある電子製品には、様々な電子部品が使用されています。そんな中でも、特に根幹的な部分に使用されている重要な部品として、トランジスタという部品が存在します。本記事では、そんなトランジスタの種類・構造・特性などについてまとめてみました。今回はCMOSロジックについてです。

2.トレラント機能とは?

トレラント機能は、CMOSロジックICに搭載されている機能です

ICはその種類によって印加可能電圧に差があります。
よくあるのは3.3V駆動と5V駆動のものです。

仮に3.3V駆動の基本的なCMOSロジックICがあったとします。
3.3V駆動のICは、電源電圧を3.3Vに設定する必要があります。
厳密には2.8~3.3Vという具合に印加電圧の範囲が定められていたり、最大定格電圧という本当の最大値が定められていますが、そこを考えると脱線するので今は最大3.3Vを印加するものだと考えてください。

そんな3.3V駆動ICは、入力信号電圧と出力信号電圧も共に最大3.3Vまでとされています。
このICに対して、3.3Vを超える電圧を入力端子に印加したり、出力端子に3.3Vを超える電圧が印加されたりした場合、回路は破壊されてしまいます。
この常識を覆し、入力端子への電源電圧を超える電圧の印加を可能としたり、意図せぬ出力端子への電源電圧を超える電圧の印加から回路を保護するような機能を指して“トレラント機能”と呼びます。
厳密には、入力トレラント出力トレラントのことを合わせてトレラント機能と呼んでいるだけです。

3.入力トレラントとは?

入力トレラントとは、ICの電源電圧を超える電圧が入力端子に印加されても、回路が破壊されずにICが動作するようにした機能のことです。

図1の最も基本的なCMOS回路(NOT回路)を例に説明していきます。

図1

この回路にVDDを超える入力電圧が印加された場合、どうなると思いますか?
本来、外部端子から侵入してきたESDを吸収して回路の誤動作を防止する用途で静電保護用ダイオードを搭載しているのですが、このダイオードを伝って入力端子→電源端子の方向に電流が流れてしまうのです。

図2

こうなると、一瞬の導通しか想定していない静電保護用ダイオードが破壊されたり、電源電圧VDDが入力電圧VINによって持ち上げられてしまう可能性があります。
なので、これを防ぐために入力端子~電源端子間の静電保護用ダイオードを取り払います
これが入力トレラントです。

図3

入力トレラントにすることで電源電圧を超える電圧を入力端子に印加できるわけですが、それにも限度があります。
この限度は、ICの動作可能電圧です。
要するに、電源電圧の印加可能範囲内に収める必要があります。
仮に電源端子への印加可能電圧が0~5.5[V]とされていた場合、入力電圧もこの範囲内に収める必要があるということです。

ただ、範囲内であるなら問題は無いので、ICの電源端子電圧を3.3[V]にして入力端子電圧を5[V]にすることは可能です。
この場合、あくまで電源電圧は3.3[V]なので、出力電圧のHighレベルも3.3[V]になります。
最初に出てきた“5Vトレラント”は正にこの機能のことを指しています
電源電圧に関わらず5[V]を入力することができるトレラント機能を持っていることを表しているんですね。

このように、入力トレラントになっているのなら、疑似的に電圧レベルの変換も可能になっているのです。
普通は5[V]→3.3[V]に変換するDC/DCコンバータが必要になるところですが、入力トレラントならそのための回路を丸々省略できるのです。

4.出力トレラントとは?

出力トレラントとは、出力端子への電源電圧を超える電圧の印加から回路を保護するような機能のことです。

入力トレラント同様に、図1の最も基本的なCMOS回路を例に説明していきます。

図1再

通常、図1の回路は入力端子がHigh/Lowレベルなら出力端子がLow/Highレベルになるという、論理回路でいうところのNOT回路になっています。

また、入力電圧が何も印加されていない場合は、出力はハイインピーダンスになります。
記号ではHi-Zと表示されていることが多いです。
なので、この回路の出力端子は「信号を出力する」・「Hi-Zになる」のどちらかの状態になっているわけです。

この出力端子ですが、受け手であるデバイスのみに接続してあるとは限りません。
場合によっては、出力電圧が異なる複数のICが接続されていることもあります。
要するに、以下のような回路構成になっていることもあるのです。

図4

この回路において、上側のCMOS回路が非動作(入力電圧無し)で出力端子がHi-Z状態になっている時、下側のCMOS回路の入力端子に0[V]の電圧が印加されたとします。
すると、上側のCMOS回路の出力端子がHi-Zになっているとはいえ、5[V]と3.3[V]では電位差がありますから、以下のような経路にも電流が流れてしまいます。

図5

この電流の回り込みは想定外の経路なので、故障の原因になります。

これを防ぐためには、電源印加端子~出力端子間に形成される寄生ダイオードに電流が流れないような構造にする必要があります
これが出力トレラントです。

図6

ちなみに、出力トレラントに関しても、入力トレラント同様に出力端子へ印加される電圧を電源電圧の印加可能範囲内に収める必要があります。
どちらにしろそのIC自体が許容できる電圧範囲が決まっているので、その範囲内での調整は可能だということです。

5.データシート上でのトレラントの見分け方

使用したいと考えている製品があったとして、その製品がトレラント機能有りなのか無しなのかを把握できなければ、ここで身に付けた知識は全くの無駄になってしまいます。
なので、データシート上ではどのように表記されているのか、東芝製のICを例に簡単に説明します。

東芝製のICの場合、入力トレラントは入力電圧VINの項目、出力トレラントはバス端子電圧VIOの項目をそれぞれ確認すれば、トレラントなのかどうかを判断可能です。
トレラントではない場合、入力トレラント及び出力トレラントは「0~VCC」という具合に定格が定められている筈です

ここで言うVCCとは、ICに印加する電源電圧のことです。
つまり、電源電圧VCCを供給したら、入力も出力も上限がVCCに依存すると言っているのです
だからトレラントではないということがわかります。

トレラントである場合、入力トレラント及び出力トレラントは「0~5.5[V]」のように定格が定められているはずです

ここで言うところの上限値は、電源電圧VCCの範囲内での最大値になっています。
つまり、電源電圧VCCを定格範囲内で供給しているのなら、入力も出力も5.5[V]まで印加されても問題無いということになります
だからトレラントであるということがわかります。

どのメーカも同じ表記方法になっているというわけではありませんが、考え方自体は同じで問題無いので、ポイントを抑えておきましょう。

以上、トレラント機能(5Vトレラントの意味)についての説明でした。