【基礎から学ぶトランジスタ】 エミッタ接地回路の入力信号波形に対する出力信号波形の求め方(信号増幅編)

電気電子
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私たちの身の周りにある電子製品には、様々な電子部品が使用されています。
そんな中でも、特に根幹的な部分に使用されている重要な部品として、トランジスタという部品が存在します。
何かしらのICが存在したのなら、トランジスタはほぼほぼ使用されています。
本記事では、そんなトランジスタの種類・構造・特性などについてまとめてみました。

今回は、「エミッタ接地回路の入力信号波形に対する出力信号波形の求め方(信号増幅編)」についての説明です。

1.エミッタ接地の特徴

エミッタ接地回路は、エミッタを基準電圧としてベースに入力信号を入れ、コレクタから出力信号を取り出す回路です

基本的な特徴は以下の通りです。

入力インピーダンス:低い
出力インピーダンス:高い
電圧増幅率:高い
電流増幅率:高い
高周波特性:悪い
出力の位相:反転

2.エミッタ接地回路の入力信号波形に対する出力信号波形の求め方

エミッタ接地回路の入力信号に対する出力信号波形が、実際にどうなるのかを例題を用いて説明していきます。

図1のような回路図及び入力信号VINがあった場合の出力信号VOUTを求めてみます。
前提条件として、トランジスタのベース-エミッタ間電圧VBEは0.7[V]、電流増幅率hFEは∞とします。

図1

入力信号が1.7[V]の場合

まずは、入力信号が1.7[V]の場合について考えます。
t=0,1,2[μs]の時ですね。

VINが1.7[V]ということは、トランジスタのベース端子にかかる電圧VBも1.7[V]になります。
エミッタ端子電圧VE=ベース端子電圧VB-ベース-エミッタ間電圧VBEなので、VE=1.7-0.7=1.0[V]になります。
つまり、1kΩ抵抗には1.0[V]の電圧がかかるので、オームの法則よりエミッタ電流IEは1.0[mA]になることがわかります。
電流増幅率hFEが∞という条件より、エミッタ電流IEとコレクタ電流ICは等しいので、回路全体に1.0[mA]の電流が流れることがわかります。

回路に流れる電流が1.0[mA]だと判明したため、5kΩ抵抗にかかる電圧もオームの法則より、5[kΩ]×1[mA]=5[V]と求めることができます。
コレクタ端子電圧VCは電源電圧から5kΩ抵抗の電圧降下を差し引いた値になるので、VC=10-5=5[V]になります。

図2

出力信号VOUTはコレクタ端子電圧VCに等しいので、VOUTは5[V]になるとわかります。
よって、出力信号をプロットすると以下のようになります。

図3

入力信号が2.2[V]の場合

次は、入力信号が2.2[V]、t=0.5[μs]の時について考えます。
考え方は先程と全く同じです。
VINが変化しているので、同じように当て嵌めていってみましょう。

エミッタ端子電圧VE=ベース端子電圧VB-ベース-エミッタ間電圧VBEなので、VE=2.2-0.7=1.5[V]になります。
つまり、1kΩ抵抗には1.5[V]の電圧がかかるので、オームの法則よりエミッタ電流IEは1.5[mA]になることがわかります。
エミッタ電流IEとコレクタ電流ICは等しいので、回路全体に1.5[mA]の電流が流れることがわかります。

回路に流れる電流が1.5[mA]だと判明したため、5kΩ抵抗にかかる電圧もオームの法則より、5[kΩ]×1.5[mA]=7.5[V]と求めることができます。
コレクタ端子電圧VCは電源電圧から5kΩ抵抗の電圧降下を差し引いた値になるので、VC=10-7.5=2.5[V]になります。

図4

出力信号VOUTはコレクタ端子電圧VCに等しいので、VOUTは2.5[V]になるとわかります。
よって、出力信号をプロットすると以下のようになります。

図5

入力信号が1.2[V]の場合

上記の方法で、入力信号が1.2[V]、t=1.5[μs]の時についても考えると、以下のようになります。

図6

こうしてプロット箇所を増やしてプロット同士を結ぶと、出力信号波形が浮かび上がってきます。
結果、出力信号波形は以下のような形状になります。

図7

入力信号が増幅されて、出力の位相が反転していることがわかりますね。

3.トランジスタの用途と活性領域

トランジスタの用途は、信号を増幅する機能と回路をON/OFFできるスイッチング機能を兼ね備えています。
今回説明した内容は、信号増幅機能を持っていたことがわかりましたね。

では、何故スイッチング機能ではなく信号増幅機能を持っているのかというと、トランジスタを活性領域で使用していたからです。

トランジスタのコレクタ電流ICとコレクタ-エミッタ間電圧VCEの特性グラフのことを出力特性と呼びます。

出力特性は、以下のようなグラフになります。
※使用するトランジスタや接地方式によってグラフの形は異なります。

図8

これは、ベース電流IBを一定に保った時のIC-VCE特性の関係を表したグラフです。
この出力特性のグラフの内、ベース電流IBが一定ならコレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずにコレクタ電流ICが一定となる領域のことを活性領域と呼びます。
この活性領域でトランジスタを動作させると、信号増幅ができるのです
逆に言うと、活性領域以外の領域でトランジスタを使用すると、スイッチング機能として働くようになるんですけどね

4.トランジスタのIC-VCE特性の領域

トランジスタのコレクタ電流ICとコレクタ-エミッタ間電圧VCEの特性グラフは、以下の3つの領域に分けることができます。

図9
赤枠…活性領域

ベース電流IBが一定なら、コレクタ-エミッタ間電圧VCEによらずにコレクタ電流ICが一定となる領域。
言い換えると、ベース電流IBでコレクタ電流ICが決まる領域です。

青枠…飽和領域

ベース電流IBを大きくしてもコレクタ電流ICが増加しない領域。
コレクタ-エミッタ間電圧VCEが小さくても、コレクタ電流ICが流れる領域とも言われる。

緑枠…遮断領域

ベース電流IBが0[A]でもコレクタ電流ICが0[A]にならず、漏れ電流がわずかに流れる領域。
漏れ電流が大きくてもメリットは無いので、特性の良いトランジスタほど遮断領域が狭くなります。

トランジスタを信号増幅用途で使用する場合は活性領域、スイッチ用途で使用する場合は飽和領域(スイッチONの状態)と遮断領域(スイッチOFFの状態)を使用します

ちなみに、コレクタ-エミッタ間には抵抗成分があるため、コレクタ-エミッタ間電圧が0[V]になることはありません。
このわずかに発生する最小電圧のことをコレクタ飽和電圧VCE(sat)と呼びます。
また、ベース電流IBが0[A]でも発生する漏れ電流のことをコレクタ遮断電流ICEOと呼びます。

以上、「エミッタ接地回路の入力信号波形に対する出力信号波形の求め方(信号増幅編)」についての説明でした。